公立・私立を問わず、所得制限なしに、高校の授業料が無償化されることになった。早稲田大学公共政策研究所の渡瀬裕哉さんは「教育の無償化ではなく『税負担化』だ。増税につながるだけでなく、教育の質を悪化させる愚策ではないか」という――。
日本の高校のファサード
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私学の教育無償化が全国で行われることに

自民・公明・日本維新の会が来年度予算に賛成したことで、私学の教育無償化が全国的に行われることになった。そして、日本維新の会はさらに大学無償化まで実現するように推し進めるという。

この教育無償化は「教育税負担化」と言い換えて良い。石破首相は「歳入・歳出両面の措置を徹底的に行い、安定的かつ恒久的な財源を見いだすことは政府の責務だ」としている。このような発言は将来的な増税によって賄うシグナルのようなものだ。

大阪府で私学の教育税負担化を行ってきた大阪維新の会(≒日本維新の会)は「増税ではなく行政改革で予算を捻出してきた」と主張している。大阪府は来年度予算でも高校や大阪公立大学の授業料税負担化のために約297億円を計上している。ただし、実際にはアベノミクスによる税収増や消費税増税効果による歳入増があり、なおかつ教育税負担化予算を計上しなければ一部見直しが可能であった過去から継続する法人税超過課税を放置している現実を無視した話なので「行革で云々」は話半分だ。

そして、大阪府はみずからが導入した教育税負担化について、国による高校授業料無償化の拡充によって府の財政負担は、2025年度に約37億円、2026年度に約254億円を削減できるとしている。つまり、大阪府は自分勝手に始めた政策の負担を最終的には国に背負わせることに成功したということだ。すでに高等教育の税負担化を実現している東京都の予算額である約600億円を足し合わせると、約900億円弱の負担が東京・大阪の二大都市から消えることになる。

結果として、永遠に続く「サブスク払い」となる

日本全体で私立高校の教育税負担化を実現するためには約6000億円が必要とされている。東京・大阪の約900億円は全予算の約15%を占めているが、他の道府県はそのような過剰な予算捻出は予算の優先順位等の観点から行われていない。都市部の金満自治体の感覚をそのまま他の道府県にまで押し付けた場合、本来はそのような予算が無かった地域にも新たな予算バラマキが行われることになる。

当たり前であるが、政府与党はこのような恒久的な予算支出を増税の好機と捉えるであろう。教育税負担化の約2倍の恒久的支出である防衛増税は、今回の自公維の賛成によってしっかりと恒久増税化の道筋がつけられていることからもお察しだ。結果として、この手の予算支出は永遠に続くサブスク払いとなって国民全員の税負担となって返ってくるものだ。

仮に日本維新の会が「行政改革によって予算を捻出する」というなら、今すぐ与党入りして来年度の骨太の方針にその旨明記し参議院議員選挙で審判を受けるべきであるが、その見通しも無さそうだ。実に無責任な政治の有様であり、政府与党による増税の仕込みは着々と進むだろう。