今度部長になる。人の上に立つ心構えとは何か

福音書とはイエス(バルバロ訳ではイエズス)の言行録のことである。「福音(エヴァンゲリオン)」は「いい知らせ」という意味で、それは「神の国が到来した」というイエスのメッセージのことだ。

新約聖書にはマタイ(バルバロ訳ではマテオ)、マルコ、ルカ、ヨハネの4人が記した福音書が、それぞれ収録されていて、どの福音書にもイエスがどのように愛を教え、十字架にかけられたかが、それぞれの視点で書かれている。

右の言葉は「マルコによる福音書」の一節である。「マルコによる福音書」は4つの福音書の中でもっとも短く簡潔で読みやすい。マタイとルカの福音書の原資料になったぐらいで資料的価値も高い。

右の言葉を語っているのはもちろんイエスである。「自分をナンバー2にしてほしい」と言った弟子に向かってこのように諭したとされる。集団が組織化されてくると、イエスの弟子たちでさえ誰が上で誰が下という序列に関心が向く。それを戒め、人の上に立つ者の心構えを説いた言葉である。

偉ぶっているだけでは本当の尊敬は得られないし、人はついてこない。イエスは「召使い」「奴隷」というきつい言葉を使って、自ら率先して黙々と働き、皆のために尽くさなければならないという。

人がついてこなければ、人の上には立てない。人の上に立つためには、人がついてくるような態度を示さなければならない。人の上に立つものこそ、へりくだらなければいけないのである。

聖書の言葉

首長として立てられた者は
人々を支配する。高官や
官僚たちは人々の上に立ち、
思うままに権力をふるって
やまない。しかし、私は言う。
あなたたちの間では
それと同じように
してはならない。自分が偉く
ありたいのならば、みんなの
召使いにならなければならない。
自分がみんなの上に
立ちたいのならば、
みずから誰にでもこころよく
仕える奴隷に
ならなければならない。


マルコによる福音書 第10章

※フェデリコ・バルバロ訳『聖書』に準拠

作家 白取春彦
青森県青森市生まれ。ベルリン自由大学で哲学・宗教・文学を学ぶ。哲学と宗教に関する解説書の明快さには定評がある。著書に『超訳聖書の言葉』『超訳 ニーチェの言葉』『この一冊で「聖書」がわかる!』などがある。
(構成=小川 剛 撮影=小原孝博)
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