聖書は古の書物ではなく、私たちの生活にも優れた示唆を与えてくれる……。大ベストセラー『超訳 ニーチェの言葉』の著者が、職場や家庭でのビジネスマンの尽きぬ悩みに、独自解釈した聖書の言葉で応える。

これも妄想である。リストラの危機であっても、リストラされたわけではない。教育費が重くのしかかってくるのも、これから先のことである。そうした妄想に思い煩って心を痛めるのは体に悪いことだと聖書は説いている。

しかし人は生きている限り、苦しみや心痛がついて回る。それにどう向き合うか。苦しみや心痛から逃げては何も解決しない。すべてを受け入れて自分なりに懸命に対処するならば、やがて大きな収穫となって戻ってくる。

そういう意味が込められているのは、旧約聖書の「詩篇」にある右の言葉だ。

詩篇は紀元前10世紀から2世紀ごろまでに生まれた宗教詩をまとめた書である。イスラエル王国の英雄で2代目の王、ダビデの詩が多いが、本当にダビデがつくったかどうかはわからない。本項で取り上げた詩は、巡礼者がエルサレムに上るときに歌った「上京の歌」の1つだ。敬虔なユダヤ人はあまたある詩をすべて記憶していて、イエス・キリストは十字架の上で詩篇の一節を口にしていた。

苦しみや心痛を乗り越えたとき状況はすべて新しくなっているが、自分自身もまた新しく大きくなっている。これも人生の面白さである。困難とその克服があるからこそ、人生はドラマチックなのだ。

聖書の言葉

苦しみや心痛から逃げては
何も解決しない。しかし、
すべてを受け入れて自分なりに
懸命に対処するならば、
やがては大きな収穫となって
戻ってくる。そのときに状況は
すべて新しくなっているが、
自分自身もまた
新しく大きくなっている。
これはまた、
人生の面白さでもある。困難と
その克服があるからこそ、
人生はドラマチックなのだ。

詩篇 第126篇