アメリカのトランプ大統領が各国に追加関税を課している。日本とアメリカの関係はこれからどうなるのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティング副主任研究員・土田陽介さんの著書『基軸通貨 ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩書房)より、「トランプ関税」の狙いを紹介する――。
2025年3月6日、アメリカ・ワシントンD.C.のホワイトハウスの執務室で、署名された大統領令を掲げるドナルド・トランプ米大統領。
写真=EPA/時事通信フォト
2025年3月6日、アメリカ・ワシントンD.C.のホワイトハウスの執務室で、署名された大統領令を掲げるドナルド・トランプ米大統領。

「双子の赤字」に悩み続けるアメリカ財政

米国のマクロ経済運営、特に財政政策は、かつてに比べると健全性を失っている。とりわけ2008年の世界金融危機以降、政府による財政拡張が常態化していることが問題だ。

2022年から23年にかけての高インフレも、バイデン民主党政権による大型の経済対策の影響を受けたものである。こうした状況が今後も続き、さらに深刻化するようであれば、米ドルの基軸通貨としての信用力が低下する恐れが大きくなる。

1980年代の米国は、いわゆる「双子の赤字」(財政収支と経常収支の赤字)の存在に悩まされていた。うち財政赤字は名目GDPの5パーセントまで膨らみ、経常収支赤字も3パーセントまで拡大することになった(図表1)。

この双子の赤字を解消すべく、当時の共和党ロナルド・レーガン政権はドル安を志向し、ドル高是正のための国際協調を主要国に迫った。これがプラザ合意(1985年)である。

次に、2023年の米国の財政赤字を確認してみると、名目GDPの6.5パーセントであり、プラザ合意の時期よりも悪いことが分かる。一方で、経常収支赤字は同3.0パーセントと、1980年代半ばとほとんど同じ水準だ。財政赤字が深刻でも、経常収支と財政収支の差分である民間収支が潤沢な黒字を計上しているため、経常収支の赤字はGDPの3パーセント程度にとどまっているのである。