2025年1月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。キャリア部門の第4位は――。

キャリア部門では、兵庫県尼崎市にあるラーメン店「ぶたのほし」店主・髙田景敏さんの波乱万丈な人生を描いた川内イオさんの記事が1位に。最大19時間待ちの人気店に成長した背景には、髙田さんの壮絶な過去と努力がありました。続いて、仕事で役に立つスキル系の記事がランクイン。話し方に自信がない人が「雑談力」以外で改善すべきポイントを解説した記事が2位になりました。ベストセラー『人は話し方が9割』の著者・永松茂久さんは「どんな人とでもうまくやっていかなければいけない」という思い込みを手放すことが重要だと強調しています。3位は、相手に好印象を与える「断り方」の解説記事。筆者の芝山大補さんは、感謝や代替案を添えることで“悪い誤解”を避けられると指摘します。1~5位のランキングは以下の通りです。

▼第1位 3億円を株投資で失い、40歳で時給850円のバイト…人生に絶望した男性が「19時間待ちのラーメン店」を築くまで
▼第2位 「コミュ力が高い人」は必ずやっている…「話すのが苦手」という人に圧倒的に足りていない「雑談力」以外の要素
▼第3位 「予定があって無理です」よりも何倍も効果的…「今度も誘おう」と思ってもらえる愛され上手の"断り方"
▼第4位 観光客ゼロの商店街が激変…1泊2日20万円でも即完売「1部屋2.5畳の酒蔵ホテル」を築いた女性オーナーの奮闘
▼第5位 連休明けの「会社に行きたくない」は要注意…産業医が指摘「急性のメンタル不調」の放置で起きるリスク

長野県佐久市にある創業300余年の橘倉酒造。その一角に酒蔵を改装して作った世界初のホテルがある。1部屋2.5畳で、シャワーとトイレは共同。蔵人体験ができるプランは1泊2日で1人5万5000円~20万円と高額だが、打ち出すツアーに世界各地から申し込みが絶えない。この「酒蔵ホテル」の誕生には、一人の女性の奮闘があった。クラビトステイ代表の田澤麻里香さんに、フリーライター・ざこうじるいさんが取材した――。
オーナーの田澤麻里香さん
筆者撮影
クラビトステイ代表の田澤麻里香さん

1部屋2.5畳で1泊20万円が即完売の「酒蔵ホテル」

「どうして男性はいつでも父親になれるのに、女性は二者択一を迫られるんだろう」

そう語気を強めるのは、田澤麻里香さん(38)。ピンクに染められたポップな髪色と、黒い法被のコントラストが目を引く。

かつて蔵人たちが酒造りのために寝泊まりした築100年の建物をリノベーションし、本格的な酒造りを体験できる世界初の酒蔵ホテル「KURABITO STAY(クラビトステイ)」を創業した人物だ。

舞台となる酒蔵は、長野県佐久市で創業300余年の歴史を紡いできた橘倉きつくら酒造。周囲に田園風景が広がるのどかな商店街の一角に位置する。

蔵人体験は2泊3日で1人8万9800円。1部屋わずか2.5畳、シャワーもトイレも共同という決してゴージャスな設備ではない。オープンは週末のみ。それでも、ここでしかできない体験を求めて世界各地から訪れるゲストが後を絶たない。

直近で蔵人体験を予約できるのは3カ月先。年に1、2回開催するリピーター限定ツアーの中には1泊2日で1人およそ20万円と高額のものもあるが、毎回即完売である。予約はすべて自社サイトからの直販だ。

写真提供=田澤さん
2.5畳の客室

「先週末はグアテマラのお客様が来てくださって28カ国になりました。今週末は香港のお客様の貸し切りです。来週デンマークのお客様がいらっしゃれば、29カ国目です」

これまで訪れたゲストの出身国を楽しげに数える笑顔の裏で、女性としてやり場のない怒りを感じてきた。

就職活動では「どうせ結婚してやめちゃうんでしょ」と心無い言葉を浴びせられ、キャリアを積んでも妊娠を機に会社に居場所がなくなった。

田澤さんの思いは、冒頭の言葉に凝縮される。

一度はキャリアを閉ざされた田澤さんが、いかにして自分の道を切り開いたのか。その軌跡をたどる。

クラビトステイがある長野県佐久市
写真提供=田澤さん
クラビトステイがある長野県佐久市