なぜ人間は夢を見るのか。筑波大学の櫻井武教授は「とくにレム睡眠中、脳は活発に活動しており、記憶として蓄積されている情報を視覚イメージとして再構成している。そのため、脳の処理能力が落ちるノンレム睡眠中とは、夢の内容が大きく異なる」という――。

※本稿は、櫻井武『睡眠と覚醒をあやつる脳のメカニズム〜快眠のためのヒント20〜』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。(第2回/全2回)

眠りにつけない人
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夢は脳が勝手につくりだした「幻覚」

江戸時代、「一富士二鷹三茄子」を初夢に見ると縁起がいいといわれた。また、悪い夢を見たときに、「夢は逆夢さかゆめ」と縁起直しをしたという。いにしえから人は、夢に何かしらの意味を見い出そうとしてきた。

しかし、それこそ夢を壊して申し訳ないが、夢は脳が勝手につくりだしている幻覚の一種だ。多くの研究者は「夢に意味や目的はない」と考えている。

私たちは寝ている間、深いノンレム睡眠のとき以外には、夢を見ていることが多い。よく、夢を見るのはレム睡眠のとき、というが、じつは浅いノンレム睡眠のときにも夢を見る。ただ、ノンレム睡眠時の夢はごくごく単純な視覚的イメージであることが多い。

それは、はしごから落ちるとか、寝る前にやったゲームの映像などで、複雑なストーリーや感情をともなうことはない。

幸せな夢や悪夢はレム睡眠中に見る

一方、レム睡眠中に見る夢はドラマチックだ。登場人物も時系列もめちゃくちゃで奇妙な夢が多く、感情をともなうストーリーがある。不安や心配、恐怖に襲われる悪夢を見ることもあれば、ものすごくハッピーな夢を見ることもある。

レム睡眠中の脳は覚醒のときと同じ、もしくはそれ以上、活発に活動中だ。とくに前頭前野以外の大脳皮質の活動が盛んで、情動をつかさどる大脳辺縁系に属する海馬や扁桃体も動いている。

レム睡眠時の夢が感情をともなうのは、扁桃体を含めた大脳辺縁系の活動と関係していると考えられる。ときに、恐怖や不安をともなう悪夢を見るのは、扁桃体が情動の中でもとくにネガティブな感情の処理に関係しているからだ。

レム睡眠中は呼吸や心拍が変動する。夢の中のストーリーに感情が動くことにともない、自律神経系が働いて呼吸や心拍に影響を与えるのだと考えられる。