2024年3月、捕鯨会社「共同船舶」の新しい捕鯨母船「関鯨丸」が竣工した。鯨肉の消費量が減っている中で、なぜ78億円をかけて船を新造したのか。

関鯨丸
写真=時事通信フォト

新しい捕鯨母船は、捕鯨業界の悲願だった

初航海を告げる汽笛が響く。

長い航海に向かう船員たちが、真新しい船の上で大きく腕を振った。濃い青と白に塗装されたばかりの船体は、やや角張った印象を与える。

船の名を「関鯨丸かんげいまる」という。世界で唯一の捕鯨母船である。

2024年5月25日。東京・有明西ふ頭公園岸壁に集まった見送りの人たちが手を振りながら声を上げた。

「気をつけて!」
「がんばれよ!」

関鯨丸を所有する共同船舶の社長である所英樹は、離岸する関鯨丸を見つめて「感無量ですね」と感慨深げに呟つぶやいた。

「73年ぶりの新母船ですからね。すべてうまくいくはずがない。それを前提に覚悟してやってくれ、とみんなに伝えています。一度、地獄を見よう、と。あとは、ケガなく、事故なく、大きいクジラを捕ってきてほしい」

建造費78億円。全長112.6メートル、総トン数9299トン。100人の船員の個室を備える。

関鯨丸竣工は、捕鯨業界の悲願だった。だが、果たして、どれだけの関係者が、捕鯨母船の新造にリアリティを持っていただろうか。