日本の家はなぜこんなに寒いのか?

寒い日が続いており、寒さに体が堪えている方が多いことと思います。

WHO「住まいと健康に関するガイドライン」
WHO「住まいと健康に関するガイドライン」

健康のためには、家を暖かく保つことが大切です。

世界保健機関(WHO)は、2018年に「住まいと健康に関するガイドライン」を公表し、この中で、「冬の室内温度は18℃以上」を保つことを強く推奨しています。残念ながら、多くの日本の住宅では、玄関・浴室・脱衣室等は18℃未満になっていますし、リビング等でも18℃未満になっている家は少なくありません。

筆者は、結露のない健康・快適な住まいづくりをサポートする会社を経営しています。本稿では、その専門家の立場から、寒い家に暮らす健康リスクや冬暖かい家にするためのポイントについて説明したいと思います。

高断熱・高気密住宅の例
画像提供=HAN環境・建築設計事務所
高断熱・高気密住宅の例

日本の住宅の断熱気密性能は圧倒的に低い

あまり一般の方は認識していないようですが、日本の住宅の断熱・気密性能は、他の先進国に比べて、極めて低い水準にとどまっています。

例えば、住宅の断熱性能を示すUA値の基準(値が小さいほど高断熱)は、冬の寒さが日本と同程度の他国で暖房が必要な地域の基準と比べると、非常に緩くなっています。

日本の6地域(東京・横浜・名古屋・大阪・福岡等の温暖地域)の省エネ基準は0.87[W/m2・K]です。それに対して、同じ気候区分の他の国の基準値は、韓国は0.54、スペインは0.51、米国カルフォルニア州は0.42、イタリアは0.40です。同じくらいの寒さの他の国・エリアと比較して、日本の断熱性能基準が圧倒的に緩いことがおわかりいただけると思います。

さらに、すきま風の少ない家であることを示す気密性能については、気密性能を示すC値(cm2/m2:値が小さいほど高気密)には、他国ではかなり厳しい基準が定められています。例えば、ドイツでは0.3[cm2/m2]、ベルギーでは0.4[cm2/m2]以下等の基準が定められています。それに対して、日本では過去に5.0[cm2/m2]以下という非常に緩い基準が存在していましたが、現在の日本には不思議なことにその基準すらなくなってしまっています。

つまりどんなに隙間だらけの家でも、クレームの対象にならないのです。はるかに厳しい基準を設定している諸外国とは大きな違いです。(関連記事〈まともな性能の住宅なら「床暖房」は必要ない…海外では違法建築レベルの「寒い家」を許す日本の政策の大問題〉参照)