日本の冬はノルウェーよりもつらい?
ノルウェーのオスロに暮らす日本人の知人が、冬の日本に一時帰国して会った際、「オスロの冬よりも日本の冬のほうがつらい」と漏らしていました。
オスロでは、高気密・高断熱住宅が一般的で、彼も築40年以上の集合住宅に暮らしていますが、家の中は暖かくとても快適だそうです。家の中で過ごしている時に、体の芯が温まっている状態なので、氷点下の外に出てもしばらくはそんなに寒さを感じないそうです。冬に外に出るといっても、ほとんどはクルマに乗るまでのほんのひと時や、公共交通機関に乗るまでの短時間で、体の芯が冷える前に暖かい環境に入れるので、寒さがつらいとはあまり思わないそうです。
それに対して、日本では、帰国して東京郊外の彼の実家で過ごしていたそうですが、古い実家は家の中も寒く、家で過ごしていても体が芯から冷えてしまっているために、外気温はオスロよりもはるかに暖かいはずなのに、外に出るのがとてもつらく感じるのだそうです。
実は夏の暑さよりも健康リスクが高い
このような家の断熱・気密性能の低さゆえか、日本では寒さに起因する死亡率が他国より高く、なんと約10%にも上るそうです。
2023年の日本の年間死亡者数は、約158万人でしたから、単純計算で、約16万人もの人が寒さに起因して死亡していることになります。
これは、英国の権威ある医学雑誌『The Lancet(ランセット)』に2015年に掲載された論文で指摘されていることです。論文では、世界の13カ国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、イタリア、日本、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、タイ、英国、米国)の7400万人強の死亡データを分析して、「適切ではない暑さ・寒さに起因する死亡が全体に占める割合」を算出しています。
日本の暑さ・寒さに起因する死亡率は、10.12%で、このうち寒さに起因する死亡率は9.81%、暑さに起因する死亡率は0.32%とされています。圧倒的に暑さよりも寒さのほうが、健康リスクが高いという結果でした。
また、他国の寒さに起因する死亡率は、日本より寒い地域ですと、カナダは4.46%、韓国は6.93%、スウェーデンは3.69%、英国は8.48%となっています。日本よりも寒い国に比べて、日本の寒さに起因する死亡率は非常に高くなっています。
またこの論文では、暑さによって引き起こされる身体的リスクは通常は即時に現れるのに対して、寒さによる影響は3~4週間続くと指摘しています。