袴田さんの冤罪を確信した刑務官

Aさんは東京拘置所に着任すると、最初に、死刑確定者と死刑判決を受けている被告人、強盗殺人等死刑が選択刑に含まれている罪を犯した被告人との面接を行うこととした。いの一番に選んだのは、日弁連が冤罪であると支援している袴田巌死刑確定者である。

監房の窓を覆う鉄格子を握りしめる手元
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Aさんは死刑判決の決め手となった、犯行時に着用していたという衣類に大きな違和感を覚えた。今までの勤務地である刑務所で受け持った受刑者数は、数千人に及ぶ。彼らの判決謄本等すべてを読み込んでいる。犯罪者は明白な証拠品を見つかるような場所に隠すことは絶対ない。あり得ない! と思った。

その頃の袴田さんは、既に拘禁反応が出ていて、事件についてのまともな受け答えはできない状況だった。刑務官という立場上、どのような事情があるにしても、被収容者個人を必要以上に支援することはできない。Aさんは袴田さんに弁護士から差し入れされた「袴田事件」に関する書籍、パンフレットなどを読み、冤罪を確信した。そこで、袴田さんの処遇に日夜当たっている舎房担当、夜勤担当、戸外運動を担当している警備隊職員との情報交換を密にした。中にはまだ拘禁反応が生じていない頃の袴田さんを知っている職員もいた。