※本稿は、難波三郎『小さな飲食店のお客が減らない値上げ』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
銀行から「2割値上げで利益が出る」と言われて実行
ここからは、値上げの前にすることについてお話しします。
あるとき、商工会議所から和風レストランの調査、助言を依頼されました。この半年ほど売上が激減していて、そろそろ危険なので助言がほしいとのことでした。
お店に行き、売れ筋だという唐揚げ定食を食べました。唐揚げがまずいお店はないのでメインはOK、量も多かったです。
ただ添え物は、既製品のポテトサラダにピンクの漬物、雑な煮物だけでした。レストランなので席間が広く落ち着けますが、全体に殺風景です。会計は1000円ちょっとでした。
その後、社長と面談しました。話によると、8カ月前に銀行から、「今の売上と経費のバランスでは利益が出ないから、全体の価格を2割上げるといい。そうすれば利益が出る」と言われて実行したそうです。そこから客数が減り、そろそろ危険だということでした。
いくつか、ポイントを整理します。
①「なぜお客に選ばれているか」が見えていない
私が食べた唐揚げ定食は、もともと880円だったそうです。この価格であれば、今まで来ていたお客は、「安くて、ゆっくりできるお店」「使いやすい場所にあって、安いお店」といった理由で、お店を利用してくれたでしょう。
しかし、今の価格だと、安くはありません。
この理由で選ばれていたお店が、急な値上げをするのは危険です。
今は安さで選ばれているお店は、商品力や接客、雰囲気を高めて、別の理由でお店を選んでもらえるようにする必要があります。
②原価率の基本がわかっていない
このお店の原価率は、高かったです。こういうお店の場合、原価率の悪化は、「動物性たんぱく質の質と量」の影響が大きいです。売上のメインはランチタイムで、客層が中高年の女性。その割に量が多いと感じました。
また添え物の部分は、少し手間をかけても、質を上げても全体の原価率への影響は小さいです。これを理解して、商品を改善してから値上げをすべきだったと思います。