渾然一体となっていた営業と審査の部隊を切り離すなど、組織を大幅に見直した。ここでも、古参社員たちが抵抗する。「お前よりシニアの面々がつくってきた組織を、何で変えるのか」と、声を張り上げた。意識改革には、メンバーを一新するしかない。そう決断する。
1人ずつ面談し、何で辞めてもらうのかを説明し、再就職先も提示した。つたない英語で言質をとられないように、腐心する。けっこう、緊張した。2年間で、すべてを仕切っていた現地社員のボスを含めて25人が去り、新しい陣容が整う。
ただ、副作用も出た。古くからの社員を切ったことに、ニューヨークの子会社で顧問をしていた米国人が怒り、本社に抗議したらしい。顧問は、オリックス創業時からの恩人。だが、引き下がらない。4年目の冬に帰国の内示が出た。でも、壁が厚く、高くなるほど、闘志が湧く。
「断而敢行、鬼神避之」(断じて敢行すれば、鬼神も之を避く)――断じて行うとの気構えで臨めば、鬼神も道を避けて意に従うとの意味で、司馬遷がまとめた『史記』にある言葉だ。何かを為すときには、断固たる意思とやり抜く意気込みがなければならない、と説く。立ちはだかる壁をものともせず、目標貫徹に注力する井上流は、この教えに重なる。
1952年10月、札幌で生まれる。父は商社マンで、生後数カ月のときに大阪へ引っ越した。さらに名古屋から東京へ。東京・中野の社宅から小学校、中学校へ通い、中大付属高校から中大法学部へと進む。
就職活動でオリエント・リース(現・オリックス)へいき、「リースって何ですか」と質問して、面接官をあきれさせた。でも、宮内さんは資格欄に「PADIのインストラクター」とあるのに興味を持ち、「これは何ですか?」と質問した。米フロリダにあるスキューバダイビングの国際組織で、試験も英語だったと答える。「英語ができるのか」と思われたらしく、入社すると、国際部に配属された。実は、読み書きはともかく、英会話は全くできなかった。