交渉から決着まで韓国へ300回

オリックス社長 
井上 亮
(いのうえ・まこと)
1952年、札幌生まれ。75年中央大学法学部卒業、オリエント・リース(現・オリックス)入社。89年同社は「オリックス」に社名変更。2005年執行役・プロジェクト開発本部長、06年常務、09年専務、10年副社長。11年より社長・グループ最高執行責任者(COO)。

1999年12月、オリックスが動いた。90年代後半の金融危機で日本の銀行や証券会社は体力を著しく落とし、企業が株式や債券を発行して資金を調達するのを請け負ったり、合併・買収(M&A)の助言や仲介をしたりする「投資銀行業務」から、遠のいた。これに対し、オリックスは「チャンス到来」とみた。組織改革で投資銀行本部が新設されて、そこの副部長になる。

それより前、韓国のハンファ企業グループからオリックスの首脳陣に「韓国第2位の生命保険会社である大韓生命の買収を、一緒にやらないか」との話が入っていた。大韓生命はアジア通貨危機の後、巨額の不良債権を抱えて経営が破綻し、韓国預金保険公社(KDIC)が公的資金を注入、完全管理下に入れていた。