大阪・船場を攻略、朝夕の徹底集配

ヤマトホールディングス会長 
瀬戸 薫
(せと・かおる)
1947年、神奈川県生まれ。70年中央大学法学部卒業、大和運輸入社。82年大和運輸はヤマト運輸に改称。87年営業推進部宅急便課長、99年取締役関西支社長、2004年常務。05年ヤマト運輸はヤマトホールディングスに移行。06年社長、11年会長。

1994年、ある春の日の朝、大阪市住之江区にある南港ポートタウンへ向かった。南港ポートタウンは77年に開かれた町で、官民の手によって建てられた高層住宅が約50棟並び、約3万人が住んでいた。新交通システム「ニュートラム」が町を貫き、東西の両端に駅がある。その一方の駅前に、立ってみた。

朝7時から3時間。みていると、始めのうちはサラリーマンと中学・高校生が、電車で会社や学校へ向かっていく。その後、幼児の手を引いたお母さんたちが集まってきて、幼稚園の送迎バスを待ち始める。朝の慌ただしさが収まった9時ごろになると、今度は主婦らしき女性たちが次々に駅へ吸い込まれていく。どこかへ働きにいくような雰囲気だ。もう」1つの駅前でも同じような光景だった。「わかった、朝の9時までに、配達すればいいのだ」