大阪・船場を攻略、朝夕の徹底集配
1994年、ある春の日の朝、大阪市住之江区にある南港ポートタウンへ向かった。南港ポートタウンは77年に開かれた町で、官民の手によって建てられた高層住宅が約50棟並び、約3万人が住んでいた。新交通システム「ニュートラム」が町を貫き、東西の両端に駅がある。その一方の駅前に、立ってみた。
朝7時から3時間。みていると、始めのうちはサラリーマンと中学・高校生が、電車で会社や学校へ向かっていく。その後、幼児の手を引いたお母さんたちが集まってきて、幼稚園の送迎バスを待ち始める。朝の慌ただしさが収まった9時ごろになると、今度は主婦らしき女性たちが次々に駅へ吸い込まれていく。どこかへ働きにいくような雰囲気だ。もう」1つの駅前でも同じような光景だった。「わかった、朝の9時までに、配達すればいいのだ」
2月に大阪支店長になっていた。職場で要望を聞いて回ると、労組の支部委員長で、団地での配達を担当していたドライバーが言った。「われわれ、朝から出ていって、夜10時ごろまで配達しているけど、それでも荷物が残ってしまう。どうにかして下さい」。団地では共働きが多いためか、日中は留守宅が目立ち、再配達が続いていた。大阪へ赴任する前に、人事部でドライバーたちの長時間労働の解消に取り組んだ。いろいろ改善策を打ったが、なかなか解消できないところもある。