東日本大震災では、政府や東京電力に批判が集まった一方、日本人のモラルの高さや企業の強い現場力も浮き彫りになった。震災によって強みと弱みが明確になった日本で、いま、経営者が取るべき行動を考える。

震災を機に変わり始めた日本の「常識」

東日本大震災とそこから発生した展開は、これまで私たちが「常識」だと思っていたことに多くの見直しを迫っている。いや、別の言い方をすれば、少しずつ崩れてきていた常識を急速に崩壊させているのかもしれない。また逆に新たに常識として見えてきたことも多い。

卑近な例を挙げればビジネスパーソンの着る服である。夏の節電対応のために日本全国で“スーパークールビズ”施策が実施され、報道によれば、企業や自治体によってはポロシャツやさらに進んだ(?)場合は、アロハシャツや短パンなども許可されると聞く。

これも数年前にいわゆる“クールビズ”が始まり、男性はネクタイ着用という暑苦しい「常識」をはずしてみたら、あまり大きな問題がなかったという流れの延長で、今回「常識」崩壊が一気に進んだ。

お客様に失礼とか、オフィスの規律を乱すなどの理由で、湿気の多い日本の夏にどう考えても適合的でなかったネクタイと背広の着用が維持されてきた状況が少しずつ変わり始めている。米国西海岸に本拠があるベンチャー企業などで、従業員がポロシャツとチノパンで仕事をしているのが、少し羨ましかったのが現実になっている。

また、別の例では、いわゆるサマータイム。サマータイムとは法令などにより一律に時計を進めたり、遅らせたりする標準時間の変更で、戦後すぐ米国からの圧力で実験的に実施したが、日本には合わないと判断され中止になり、いままでずっと反対意見が「常識」であった。

なかには東京大学の坂村健教授が述べておられるように、「一律時計を進めるようなサマータイム制は……ピークを崩さずそのままズラすだけ」(毎日新聞 2011年4月17日朝刊)で、省エネ効果は期待できないとの意見もあるが、最近では夏の節電にむけて、法令などによる一律の方式ではなく、企業ごとの就業時間の変更という形をとって導入されている。