日本では福島の原発事故を発端に、個人、企業ともに慢性的な電力不足に悩まされている。現状のままでは、日本経済の成長力が深刻な危機に陥りかねない、と懸念する筆者が、対応策を提言する。

37年ぶりの「電力使用制限令」が発動

東日本大震災時における地震と津波によって東京電力福島第一原子力発電所が停止し、さらに水素爆発によって大きく破損するという事故が起きたことに伴って、全国で運転していた原子力発電所が運転停止となったり、あるいは、点検等のために休止している原子力発電所の運転再開に対して慎重に対応されている。そのため、今夏の電力不足が懸念されて、経済産業大臣によって、第一次石油ショック直後の1974年以来、37年ぶりに「電力使用制限令」が発動された。

7月1日より、東京電力と東北電力の管内において、大口電力需要者(契約電力が500キロワット以上)に対して消費電力を、昨年の使用最大電力の値(1時間単位)の15%削減した値を使用電力の上限とする。この15%節電に従った消費電力目標値が守られなかった場合には、1時間当たり100万円の罰金が科されることとなった。

筆者が勤務する一橋大学もこの大口電力需要者としてその対象となっている。東日本大震災直後の計画停電の実施時から節電対策を採ってきた。

建物内のエレベーターの利用を控えたり、電灯をLEDに変えたり、あるいは、電灯の数を減らしたり、キャンパス内の外灯を部分的に消灯したり、さらには、大学のシンボルである時計台の時計の照明まで消して、対応している。夏場にきて、これだけでは足りない状況も想定されるために、節電目標の達成に向けて対応策を練ってきた。

このような物理的な節電対策そのものも必要であるものの、節電に対する意識を高めることも重要であると考え、とりわけ学生に向けての広報を目的として、学生を対象にして節電アイデア・コンテストが行われた。そこで発表された節電アイデアは、おおよそ以下の3つのタイプに分類される。

第1のグループは、物理的に消費電力を削減するものである。前述したように、エレベーターの利用を控えたり、消費電力の少ない電気機器(例えば、LED)に変えるというものである。これらは、直接に消費電力を縮小するという効果をもたらすものであって、多くの者がすぐに思いつくことであろう。

しかし、これらは多少の費用を要するうえ、工事を伴う場合には今夏に間に合わない。例えば、太陽光を利用した発電システムであるソーラー・システムは、確かに自然エネルギーとして従来のエネルギー節約に対して効果的である。しかし、ソーラー・パネルをキャンパス内に並べるだけでは、当然であるが、太陽光が得られるとき、晴天の日中におけるエネルギー源としての利用に限定されてしまう。

太陽光のエネルギー源を常時、使えるようにするためには、ソーラー・パネルとともに蓄電池も必要となる、これは、相当のコストを要するものである。そのうえ、蓄電池の入手が難しい。