福島第一原発の事故で、原発に対する社会の姿勢が問われている。今後、日本は原発にどのように対応すべきか、具体的なシナリオを描きながら、考察する。

世論調査では「現状維持」と「減らす」で7割を超える

3月11日の東日本大震災にともない発生した東京電力・福島第一原子力発電所の事故以降、わが国の世論は大きく二分され、「原発容認」と「脱原発」に割れたと言われることが多い。しかし、本当にそうだろうか。

事故後の福島原発。日本のエネルギー政策は転換を迫られている。(AP/AFLO=写真)

事故後の福島原発。日本のエネルギー政策は転換を迫られている。(AP/AFLO=写真)

福島第一原発事故後の原発に関する世論調査で一貫して最も少数なのは、「増やす」という選択肢である。次いで少ないのが「すぐやめる」。当初最も多数であった「現状維持」は、時が経つにつれて「減らす」に追い抜かれるようになった。

多くのマスコミは、「すぐやめる」と「減らす」をまとめて「脱原発」とし、「増やす」と「現状維持」をまとめて「原発容認」としたうえで、世論が二分されていること、徐々に「原発容認」に対して「脱原発」が優勢になりつつあることを報じている。

しかし、実際の世論は別のところにある。ここで注目すべきは、「現状維持」と「減らす」の合計値がほぼ一貫して7割を超え、圧倒的多数を占め続けていることだ。「現状維持」を選んだ人と、「減らす」を選んだ人とのあいだに、大きな意見の違いはない。

いずれも、「できれば危険だから原発は使いたくないが、コスト、需給、地球温暖化問題などを考えると、ある程度使い続けなければならない」と考えている。この意見は、「すぐやめる」という「脱原発」とは異なるものであり、「脱原発依存」と概括することができる。

福島第一原発事故後の国内世論の趨勢は、「脱原発」ではなく「脱原発依存」にあるとみなすことができる。

今後の原子力発電のあり方に関しては、その危険性と必要性の双方を直視し、冷静で現実的な議論を煮詰めてゆく必要がある。

議論を深める際に出発点となるのは、「脱原発依存」を願う世論の動向をふまえ、日本における原子力発電の規模が将来的には縮小してゆくという大局観をもつことである。わが国には、現在、54基の原子力発電プラントが稼働しているが、今後、どのような原発縮小シナリオを考えうるだろうか。表1は、それをまとめたものである。

表1.東京電力・福島原発第一事故を受けた原子力発電の縮小シナリオ
表1.東京電力・福島原発第一事故を受けた原子力発電の縮小シナリオ