橋本環奈主演のNHKの朝ドラ「おむすび」が苦戦している。“朝ドラ好き”で、コラムニストの矢部万紀子さんは「前作の『虎に翼』はエンタテインメントとして上質だった。『おむすび』を見ていると、『あまちゃん』の後に始まった『ごちそうさん』との3つの共通点を感じた」という――。
連続テレビ小説「おむすび」NHKドラマ・ガイド
画像=プレスリリースより

話に乗りづらく、展開が緩い

朝ドラ「おむすび」が始まって2週間。10話をコンプリートした。けっこう大変だったが朝ドラについては著書もある身、なんとかやり遂げた。

10話で主人公・米田結(橋本環奈)の「ハギャレン(博多ギャル連合)」加盟が見えた。ここからはこんな感じでギャル話が続き、やがて栄養士になる。わかりました、これにて「おむすび」卒業――。

と、かなり真剣に思ってしまった。話に乗りづらく、展開が緩く、2004年=20年前の話なのに古臭い。つまり面白くない。しかも気の毒なことに、どうしても「とらつば」こと「虎に翼」と比べてしまう。

もっと別な、通常モードの朝ドラの後だったら、こんなにも不満は感じなかったはず。と思いもするが、還暦を過ぎた身にギャルは厳しい。

“ギャル問題”から書くならば、当初(=スタート前の情報解禁段階)は、「ヒロインの遅れてきたギャル設定、わからなくない」と思っていた。

というのもこの数年、「今どきギャル」に焦点をあて、「流行りと関係なく己の信じる道を行く、意志ある人」と解説されているのを何となく知っていたから。ヒロインの意志のありかを示す、“材料”としてのギャルなのではと解釈したのだ。

「ギャル」に共感できない

が、10話まで終わった時点で言うなら、結を「ハギャレン」に誘うギャルたちは「意志の強い人」というよりは「イラッとさせられる人」で、背景にいろいろ大変さがあることもわかったけれど、共感できるかと聞かれれば「ノー」だ。

そもそも高校1年になったばかりの結とギャルを結びつけるのは、「伝説のギャル」だった姉・歩(仲里依紗)だ。

歩が初代総代だった頃はメンバー100人だったハギャレンも、現在は4人。現・ハギャレン総代の瑠梨(みりちゃむ)が「歩の妹を総代にすれば盛り返せる」と考え、激しくリクルーティングする。結が所属した書道部の話も少し描かれるが、これも別に面白くない。

結のハギャレン入りまでの道を簡単にまとめると、

①「無理です、すみません」と断る

②メンバー・鈴音(岡本夏美)の事情(母子家庭。食費節約のためスナック菓子しか食べず、栄養失調で倒れる)を知り、「友達なら」よいと譲歩

③プリクラを一緒に取る

④やはりやめたいと言うと、プリクラを親に見せると瑠梨におどされる

⑤瑠梨の事情(仕事人間の両親から見捨てられている)を知り、「パラパラ、教えてください」と申し出る=事実上のハギャレン入り、とあいなる。

瑠梨の話し方が「チョー上げー」「チョー下げー」とやたらと「チョー」を多用し、ギャルっぽさの強調とわかっても聞くたびにイラッとする。結はと言えば、彼女らの事情を知るたびに距離を縮める。優しいというより情にほだされやすい人に見える。