「おまえ」はダメ、を描けたのに他が古い
8話、父と母(麻生久美子)との会話だった。父は博多に行った結が心配で駅に迎えに行き、結に反発される。それに対し、母が「お父さん、バカなの?」と言う。
「心配しただけだ」と言い訳する父に「だからって駅で待ち伏せする? バカっていうか、怖い。引く」と母。そこで祖父が口をはさんでくるが、「おじいちゃんは黙ってて、今、夫婦で話してんの」と母が返す。
義父に「黙っていろ」という態度も含め、麻生さんという俳優の今どき感が心地よいシーンだった。娘への態度を「度を越してんのよ、あんたは」と母が言い、「おまえが甘すぎるんだ」と父が返す。そこから「おまえ論争」になる。
母が「今、おまえって言ったね」と言い、「そっちが先にあんたと言った」と父。「あんたはいいの。おまえはだめ」と母。このテンポと視点で描けるのに、他がどうにも古いのは作戦? だとしたら何の?
さて、そんなこんなの「おむすび」なのだが、見るたびに思い出すのが、「ごちそうさん」(2013年後期)だ。
「あまちゃん」から「ごちそうさん」の流れに似ている
この朝ドラ、ヒロインが杏さんでその夫役は東出昌大さん。2人は放送終了から1年も経たずに結婚、いろいろを経て離婚した。という有名エピソードのほかにも、知っていただきたいことが。それは「おむすび」との共通点の多さだ。
共通点その1は、前作が超話題作という点だ。「とらつば」→「おむすび」に対し、「あまちゃん」→「ごちそうさん」。宮藤官九郎脚本で、「じぇじぇじぇ」が新語・流行語大賞(ユーキャン主催)の「年間大賞(2013年)」に選ばれた「あまちゃん」からの「ごちそうさん」だったから「大変だよなー」と見ていたことを思い出す。
その2は、テーマ=食。「ごちそうさん」のヒロインは料理好きの専業主婦、「おむすび」は栄養士。「食ですよー」というわかりやすいタイトルもそっくりだ。
そしてその3は、どちらも「ヒロインが水に落ちる」だ。「おむすび」が自ら海に飛び込んだのに対し、「ごちそうさん」は足を滑らせ川に飛び込む。少し違うけど、どちらも水落ち。偶然だろうけど。
ところで「ごちそうさん」だが、実は「あまちゃん」より人気だった。「あまちゃん」の視聴率は期間平均で20.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、対する「ごちそうさん」は22.3%だったのだ。