自分の命を守るために放置してはいけない症状は何か。鳥取大学医学部附属病院循環器・内分泌代謝内科学分野講師の衣笠良治さんは「心房という部屋の筋肉の一部がブルブルと震えて、痙攣を起こしているような状態になる『心房細動』は放置すると怖い病気だ。痙攣を起こしできた血栓が血流に乗って頭の方に流れると、脳の血管が詰まり脳梗塞の原因になり、心臓の働きを悪くする『心不全』の原因になる」という――。

※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 17杯目』の一部を再編集したものです。

赤い聴診器と異常を示すエコー図
写真=iStock.com/wingedwolf
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痙攣で血栓ができると脳梗塞の原因に

心臓の働きを一言で表現するならば、体の中で血液を循環させる「ポンプ」だ。肺から取り込んだ酸素を血液の循環で体のすみずみまで運び、同時に体の中で作られた二酸化炭素を体外に排出する。この心臓の周期的な収縮運動がおかしくなる状態のことを「不整脈」と呼ぶ。

「不整脈にはさまざまな種類がありますが、なかでも発症する頻度が多く、他の病気の原因にもなるため特に注意が必要なものに『心房細動』という疾患があります。これは心房という部屋の筋肉の一部がブルブルと震えて、痙攣を起こしているような状態になるのです」

そう語るのは、鳥取大学(以下とりだい)医学部附属病院循環器・内分泌代謝内科学分野講師の衣笠良治だ。循環器内科医は心臓や血管を中心にして、血液の流れに関する疾患を専門的に扱う。

心臓外科手術の様子
撮影=中村 治

心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室と呼ばれる4つの部屋が、それぞれに適切なタイミングで「拡張」と「収縮」を繰り返している。

「痙攣を起こすと心房の中の血液を充分に送り出せなくなるので、流れが淀んで血栓と呼ばれる血の塊ができることがあります。

その血栓が血流に乗って頭の方に流れてしまうと、脳の血管が詰まる脳梗塞の原因になることがあるんです。また、心臓の働きを悪くする『心不全』の原因にもなります」

放置すると怖い病気なんですと衣笠は強調する。