利用者目線に立った建築とは何か。建築家の竹山聖さんは「病院はいくつもの部屋が必要で、管理しやすいように作られている。多くの患者さんを収容するためには天井は低くなり、窓からの景色は考慮されない。これは学校、刑務所と同じビルディングタイプに入る」という。鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長との対談をお届けする――。

※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 16杯目』の一部を再編集したものです。

鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長(左)と建築家の竹山聖さん
撮影=中村治
鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長(左)と建築家の竹山聖さん

病室からどれだけ素晴らしい景色がみえるか

【竹山聖(建築家)】対談前に“病院ツアー”に参加して様々な場所を見学してきました。するとたまたまドクターヘリが出動する瞬間にあたったんです。急いでヘリポートまであがって、ドクターヘリが飛び立つのを見送りました。

【武中篤(鳥取大学医学部附属病院長)】それはなかなかレアな体験です(笑)。ツアーに参加されても出動していてドクターヘリがいないときもあるんです。ヘリポートは地上20メートルの高さにあります。あそこはぼくも好きなんです。ものすごくいい景色ですよね。

【竹山】ええ、遠くに青い中海が見えました。天気も良かったので、本当に素晴らしい景観でしたね。新病院は今と同じ場所に建てられることになるんですよね。

【武中】はい。そうです。加えて米子市から中海側の湊山公園の一部を提供していただくよう準備を進めています。

【竹山】中海が見えるという立地は最高です。個人的な体験になるんですが、3年前に早期がんが見つかり入院しました。一度目の入院は窓から外が見える部屋だったのでものすごくリラックスできました。ところが二度目は廊下側(笑)。

景色が見えるか見えないかで人間は気分が変わる。景観は人を癒やすとつくづく思いました。病室からあの中海の景色が見えればすごく魅力的ですね。

【武中】そうなんですよね……。ところが今のとりだい病院では、どの病棟からも中海は見えない。とりだい病院に限らず、国立大学病院というのは、患者目線というか、そうした発想がなかった。