病院は建築的に刑務所と同じ?

【竹山】ぼくも京都大学で長く教えていたので国立大学の事情は察します(苦笑)。そもそも建築計画学的には、病院は学校、刑務所と同じビルディングタイプに入るんですよ。

【武中】えっ、刑務所と一緒?

【竹山】いくつもの部屋が必要で、管理しやすいように作らねばならないということが共通しています。刑務所はもちろんですが、病院も健康的弱者をケアするため管理が必要。学校は自由にのびのびなんて言いますが、職員室から運動場、教室を見通せなければならない。

【武中】どうしても管理者にとって効率の良い作りになってしまう。

【竹山】多くの患者さんを収容するためには天井は低くなり、窓からの景色は考慮されない。病室はナースステーションから様子を窺いやすいよう配置される。でも監視されるのは患者さんにとって嫌ですね。

【武中】なるほど。今後はその部分についてはAi(人工知能)で患者さんを見守るなどの形でカバーできるかもしれません。我々が考えているのは、Ai、IT、DX(デジタルトランスフォーメーション)を利用したスマートホスピタルです。デジタルの一番の弱点は共感力。その部分は人がカバーしなければならない。

現時点で決まっているのはこれぐらいで、これから色んなことを決めていかねばなりません。今のとりだい病院の主たる部分は50年以上前に建設されました。そもそも病院は何年ぐらい使用されるという前提で作らなければならないのでしょうか?

人口減と未曾有の事態から病床数を考える

【竹山】医療の世界は日進月歩です。とりだい病院が力を入れているロボット支援手術などの進歩を考えれば、建物の機能的なところは50年ぐらいで建て替え、あるいは全面改修の必要がある。

ただ、機能的でない部分については、この年数にとらわれなくてもいいでしょう。強度、耐久性という点でいえば、現在のコンクリートはカーボンなどの素材を加えて長持ちするようになっています。

(左から)武中篤病院長と建築家の竹山聖さん
撮影=中村治

【武中】つまりフレームはそのままで中身を時代に合わせて変えていくことも可能だと?

【竹山】やりようはありますね。

【武中】現時点でとりだい病院の病床は697床。竹山さんもご存じのように、この地域は人口が減っています。将来的にこの数を維持するのは無理。普通に考えたら新病院は、ダウンサイジング、つまり病床を減らさねばならない。

ただ、今回の新型コロナで分かったように未曾有の事態が起こったとき、病床を急に増やすことはできない。この地域における医療の最後の砦としてある程度の余裕を持っておく必要があります。