創業当時は「甘党の店」だった
ところで、なぜラーメン店なのに「甘味」が売れるのか? その答えは、店の成り立ちに由来する。
あまり知られていないが、スガキヤはまもなく創業80年になる老舗だ。
戦後すぐの1946年、名古屋の中心地・栄(名古屋市中区)に開業した店は、ぜんざい、パン、焼き芋など甘いものを提供していた。当初は屋号がなく、お客さんから“甘党の店”と呼ばれた。2年後の1948年にラーメンが加わり、屋号を「寿がきや」とした。
つまり甘党の店→ラーメン店に進化したから、今でも甘味メニューが充実しているのだ。店の横顔は「甘味食堂」といえる。
その伝統を受け継ぐのが、「クリームぜんざい」(280円)だ。かき氷以外の多くの甘味は通年販売で、同商品は売れ行き上位だという。手頃な価格だが素材にもこだわっている。
「クリームぜんざいの小豆は、北海道産大納言の希少品種を使っています。上にのるソフトクリームがさっぱり系なので、甘みのきいた小豆とのバランスで人気の品です」(同)
スガキヤ経験者にはおなじみだが、ラーメン+甘味を一緒に注文するお客さんが多い。一般的なラーメンチェーンに比べると「おやつ感覚やスナック(snack:軽食)感覚で使われる店です」と同社は話す。
こうしたライト感覚で店が使われるのも競合店にない特徴だ。スガキヤの店舗は、かつてはユニー系の大型商業施設が多く、近年はイオン系施設が増えた。
スガキヤで最も売れる店は愛知県ではない
現在、スガキヤで最も東にある店舗は、「MEGAドン・キホーテUNY富士吉原店」(静岡県富士市)で、スガキヤ全店で2023年度売り上げNo.1は「スガキヤ各務原イオンモール店」(岐阜県各務原市)だ。
営業時間は店によって異なるが、朝10時~夜20時台が一般的。売り上げはいつの時間帯が多いのか。
「ランチ需要が中心です。先ほどお話ししたように、スガキヤをスナック感覚でご利用される方が多いからです。また、大型商業施設のフードコート内にある店は、施設もフードコート自体も夜はあまり強くない特性があります」(同)
スガキヤの売上比率は「昼(10時~15時)の売り上げが全体の6割強」だという。この傾向は、カフェや喫茶店に似ており、多くのカフェは夜の時間帯が強くない。
来店客の中には麺類ではなく甘味を食べに来る人もいる。かき氷のシーズンが終わると、前述したソフトやクリームぜんざいのほか、「チョコクリーム」や「ベリークリーム」(チョコソースやベリーソースがかかったソフトクリーム、いずれも280円)を頼む人が増える。昔ながらの「あんみつ」(350円)はシニア層の支持が高い。
甘味メニューは100円台~300円台で注文できる。諸物価高騰のご時世でも、財布にやさしい価格帯を貫く。