高齢者ほど家を借りられない問題が発生している。なぜなのか。住生活問題に詳しい葛西リサ氏は「高齢者へ積極的に物件を紹介する不動産会社はわずか13.7%にとどまる。高齢者ほど家が借りられないという現象は、高齢化の進む今、人ごとではない」という――。

※本稿は、葛西リサ『単身高齢者のリアル――老後ひとりの住宅問題』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

アパートの窓から外を眺める高齢女性
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賃貸住宅を借りられない高齢者たち

高齢で収入が低く、住宅に窮している――そういった状況にある人も、公的住宅には入居ができず、民間の賃貸住宅に依存するほかないという状態が慢性化している。

民間の賃貸住宅は、全住宅の3割、賃貸住宅市場のおよそ8割を占める。供給のボリュームは大きいが、民間の賃貸住宅は、認知機能や身体機能の低下をリスクとみなして高齢者を排除する。たとえ資産があったとしても、貸し渋られるケースは多い。

ある70代の女性は、熟年離婚を機に、民間の賃貸住宅への入居を希望したが叶わなかった。数千万円の貯蓄を提示しても「オーナーが首を縦に振らない」と、仲介の窓口で断られ続けた。彼女が希望した物件は、いずれも子育て層が好みそうな人気物件だった。

働き盛りの子育て世帯と独居の高齢者。家主が入居者としてどちらを選別するかは一目瞭然だろう。結局は、相続する親族もいないのに、中古の分譲マンションを購入して急場をしのぐほかなかったという。

高齢期に住み替えが必要になる理由

高齢者向けの見守りサービスなどを展開し、住宅に困る人々の住宅探しを行う居住支援法人格を有するホームネット社によれば、高齢期に住宅の確保が必要となる理由として、世帯構成の変化や立ち退き(建物の取り壊しなどの理由による)という事情が多いことがわかっている。

世帯構成の変化については、先に述べたような離婚や別居のほか、同居親族の死亡等に伴う住宅のダウンサイジングといった理由もあるという。

例えば、配偶者の他界を機に、郊外の持ち家から子と近居するために都心部の民間賃貸住宅への移動を希望するという事例も、ここに含まれるだろう。立ち退きについていえば、高齢者の場合、壮年期から同じ民間賃貸住宅に住み続けていればおのずと家屋も老朽化する。

また、市場から排除されがちな高齢者の場合、入居可能な物件がそもそも老朽化している場合も多い。なお、身体機能の低下にともなって、段差の少ない物件や、エレベーターのない2階以上の階数から1階へ住み替えるケースも少なくないようだ。

しかし、高齢期の民間賃貸住宅への住み替えは簡単ではない。自宅で亡くなる割合は、高齢であるほど高くなる。遺体が放置され、特殊清掃が入る事態となれば、物件の価値は著しく低下する。