民間賃貸住宅を活用した高齢者向け住宅施策
こういった高齢期の住まいの不利を繕うために、2000年代以降、政府は高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)を制定するなど、積極的に民間の住宅を活用した制度を展開するようになる。
例えば、2001年には、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅を高齢者円滑入居住宅(高円賃)と称し、貸主がこれを都道府県に登録、物件情報を公開する制度が創設された。2005年からは、高円賃のうち、高齢者に特化して供給される物件を高齢者専用賃貸住宅(高専賃)として登録する仕組みが追加されている。
さらに、2009年には、高齢者優良賃貸住宅制度(高優賃)がスタートする。バリアフリー化、緊急時の対応サービスが利用可能な同住宅は、入居者の収入に応じて家賃助成の仕組みが整えられたことが特徴である。
とはいえ、これら、高齢者向けの住宅において、入居者に対する生活支援等のサービスの提供は任意とされていたため、その質が担保されづらく、介護が必要になった場合、結局はそこに住み続けることができないなどの課題があった。
そこで2011年には、先の法律上に位置づけられる、高円賃や高専賃を廃止、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に一本化されることとなった。
供給が不足している「サ高住」
サービス付き高齢者向け住宅とは、バリアフリー構造のほか、一定の面積、設備基準を満たした住宅で、そこにケアの専門家による見守りサービスがセットされたものを指す。政府は、これを運営する事業者に建設費を補助するなどして、供給量を増やす方針である。
2025年3月末時点で、サービス付き高齢者向け住宅は、全国に29万戸強存在するが、この供給量では、今後増大する高齢者人口の受け皿にはなりえない(図表2–1)。
なお、2023年8月末時点におけるサービス付き高齢者向け住宅の登録状況から国土交通省が集計した結果によれば、その入居費用(月額)は、全国で平均11万円、大都市圏では12.7万円、地方圏でも9.2万円となっている(国土交通省資料「サービス付き高齢者向け住宅について――高齢者の住まいについて」2023年)。
同住宅は、支払い能力がある層への対応としては有効な部分もあるが、充分な蓄えもなく、年金のみで生活する中低所得層の高齢者にとっては手が届きにくいという問題がある。そのため、いかにして高齢者が賃貸住宅で住み続ける仕組みを作るか――その点が熟考されなければならないのである。

