市民プールを解体して新たな学校に
一方で、さいたま市は沼影公園の解体で不足する公園用地について、市南部地域で代替用地の確保を目指している。
すでに、2024年度から沼影公園の屋外プールなどの解体工事は始まっているのだが、取材した2023年9月当時のさいたま市の担当者のインタビューを紹介しよう。さいたま市都市公園課の川名啓之課長は以下のように語ってくれた。
「沼影プールはやはり皆さんにとって貴重な施設ですし、夏の思い出づくりのための施設という認識もありますので、なんとか残してほしいという声をいただいているのは事実です。ただ、子どもたちの教育環境という部分では学校も必須というところで、今回こういった形で沼影公園を廃止しまして、学校をつくっていくという決断に至った次第です。子どもたちの教育環境を大事にしたいという部分で皆様方には丁寧に説明をして、ご理解をいただきたいと考えております」
さいたま市は、再開発の進む武蔵浦和駅周辺地区では、学校の建設用地の取得が不可能だとして、苦渋の決断だったと話す。
新たな小中一貫の義務教育学校の開校は2028年度の予定だが、これによって周辺の大規模化している小学校や中学校の校庭や体育館が手狭だといった学校規模の課題の改善が図られる見通しだ。
さいたま市教育委員会は、子育て世帯が増えて、さいたま市が移住先に選ばれていること自体は大変ありがたいが、人材確保やハード面の整備が課題となっており、今後も子どもたちの教育環境の整備に取り組む必要があるとしている。
教育だけでなく、医療分野にも大きな影響が
さらに取材を進めると、人口増加の影響は市民生活に欠かせない医療分野にまで及んでいることも見えてきた。
都内からさいたま市に移り住んだ30代の女性とその家族のケースから考えてみたい。この女性は、さいたま市は子育てがしやすい街だと聞き、2021年に家族で都内からさいたま市内のマンションに移り住んだ。
仕事の関係で都内に住んでいたが、夫婦ともに地方出身だったことから、都心ではなく郊外で子育てがしたいと、引っ越しを検討していた。埼玉県だけでなく千葉県なども検討していたが、実際にさいたま市の街を下見で訪れたときに、街の雰囲気が気に入ったという。
「駅に降りてみて、すごく空が開けている。街がきれいだったり、歩道が広く並木道になっていたりしていて、雰囲気が気に入ったことが一番最初にありました。都内に住んでいたころは、歩道が狭かったり人が多かったりしてもそんなに気にならないと思っていたのですが、一度広々としたところに住んでしまうともう戻れないなという感じで、思っていたよりも快適です」
さいたま市に移り住んだ当初は夫と子ども2人の4人暮らしだったが、その後、3人目の子どもが誕生し、今は子どもが3人、合わせて5人で暮らしている。