子どもが多すぎて小児科がキャパオーバーに

ところが、移り住んだ当初は想定していなかった事態に直面しているという。

「小児科がすぐ埋まってしまいます。ウェブでの診療予約で、予約の空き枠がないと出てきてしまう。インフルエンザなどが流行った時は全然予約が取れず、ちょっとしんどそうでも、まあ水分とって寝させて、という感じです。

逆に最近は、周りでそういった発熱の子が少ない時にうちの子が発熱すると、今なら予約が取れそう、ラッキーと思ってしまう自分がいて、何かおかしいなみたいな……。ママ友の間でも、あの病院は1回診察してもらわないと発熱の子どもは受け入れていないとか、うちはどうしても診てもらいたい時はタクシーでどこどこに行っているという話をします」

女性は、さいたま市への移住については総じて満足しているが、医療については改善してほしいと感じているという。

実際に、さいたま市内で小児科医として働く医師も、子どもの増加を実感しているが、全員を診ることはなかなか難しく、もどかしい思いを抱えているという。与野駅が最寄りのにしむらこどもクリニックの西村敏院長に話を聞いた。

「みんな診たいのですが、診きれないのは、もうどうにもなりません。体が二つあるわけではないですから、キャパ以上はできない。働き方改革などで職員の労働時間も厳格化されており、8時間以上の労働は昔のようにはできないのが現状です。残念ながら、みんな診たくてもできないということで、ジレンマを抱えています」

頭を抱える医師
写真=iStock.com/kuppa_rock
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一時的に医師を増やすことは現実的ではない

さらに、ここ数年はコロナ禍で発熱外来の対応が求められ、患者一人あたりの診療に時間がかかることも現場の負担につながってきたという。そのうえで、次のように指摘した。

「地域で急に子どもが増えても(医者は)増えない。あと今、少子化になっていますから急に(子どもが)増えたからそこに(医師を)増やそうとしても、マンションの場合、十何年経つと子どもも巣立っていきます。一時期だけそこで開業してまた別の場所に移るというのも現実的ではありません。

だから、同じタイミングでファミリータイプの大規模マンションが建ち、お子さんが急に増えれば、それは対応しきれなくなる可能性がある。だから計画的に開発していっていただければベストです。行政と小児科医会の連携があってもいいのかもしれませんが……」