カスハラをするのは40代以上男性がほとんど

ご存じの方も多いだろうが、カスハラは基本的に「おじさん」に顕著に見られる。

交通・運輸・観光などの産業で働く約60万人が加盟する全日本交通運輸産業労働組合協議会(以下、交運労協)が2021年5~8月に全国の公共交通機関、物流、観光産業の現場で働く2万908人を対象に直近2年以内の「カスハラ」を調査したところ、驚くべき「加害者像」が浮かび上がった。

それは男性が86.4%で、しかもその7割は40代以上だったのである。30代は10%、20代は4.1%と若くなるにつれてカスハラ加害率は低くなる。

昭和の映画やドラマでは、定食屋や居酒屋で店員にちょっかい出したりクレームを入れたりするのは「若いチンピラ」だったが、今ではそういうシーンは「おじさん」や「おじいちゃん」にしないと現実味がないのだ。

では、なぜ社会人経験豊富で、血気盛んな若い男たちよりも分別のつく「大人の男」が、立場の弱い人を相手に口汚く罵り、ネチネチと説教をして、論破をして悦に入ってしまうのかというと、自分が接客で嫌な目に遭ったので、今度は客の立場で「八つ当たり」をしているという側面が強い。

パワハラの「被害者」が今度は「加害者」に

カスハラについて定期的に調査をしているUAゼンゼン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)の流通部門副事務局長の安藤賢太氏は21年にメディアの取材にこう答えている。

「2017年にカスハラのヒアリング調査をした時、カスハラ加害者はサービス業が多いという結果が出ました。働く現場でカスハラを見ているので、自分がサービスを受ける側になってちょっとでも不具合があると、すぐ怒りに変わってしまうんです」(BUSINESS INSIDER 21年6月7日

実はこれはカスハラだけではない。

報道対策アドバイザーとして企業のパワハラ不祥事などの実態を聞く機会があるのだが、そこで部下にパワハラをした管理職などにヒアリングをすると、かなりの高い確率で「自分が若い時はもっとひどいことをやられた」という武勇伝なのか、釈明なのかよくわからない主張を聞く。

つまり、平社員時代に凄まじいパワハラを受けてきた「被害者」がキャリアを積んで、管理職や幹部社員になったことで今度は「加害者」として、部下たちにパワハラを繰り返してしまうのだ。