逆風下にある国内小売
百貨店(Department Store)は、戦前戦後の日本にあって長らく小売の王座にあった。昭和の時代の後半に、この王座に挑んだのが総合スーパー(GMS:General Merchandizing Store)である。1972年にその代表格のダイエーが、百貨店トップの三越を売上高で追い抜いた(佐藤肇『日本の流通機構』有斐閣、1974年)。これは、高度経済成長期のなかで生じた日本の小売の地殻変動を象徴するできごとだった。
しかし、近年の日本の小売にとっては、経済成長期は遠い昔の話となってしまった。小売をめぐるニュースは様変わりしている。国内では経済活動の停滞が続き、人口の減少とネット通販の拡大は止まらない。そのなかで地方では百貨店の閉店などが続く。ピークの1999年には200を超えていた地方百貨店は半減してしまった。
総合スーパーについても、同様の動きが顕在化しつつある。本年2月には、イトーヨーカドーが北海道と東北・信越地方から撤退することが伝えられた。かつては日本全国でダイエーと覇を争っていたイトーヨーカドーが、これらの地域における計17店舗を閉店するという。
中期経営計画で毎年100店程度の新規出店を打ち出す
一方で、こうした状況のなかでも積極的な出店を着々と続ける企業もある。
良品計画はそのひとつである。現在の良品計画の主力事業である無印良品は、国内に500ほどの店舗を展開している。2021年に発表された良品計画の中期経営計画では、かつて得意としていた都市部の繁華街ではなく、ベッドタウンや地方都市など、より消費者の生活圏に近い立地を中心に、さらに国内で毎年100店ほどの出店を続けていくのだという。
2021年以降の同社の国内事業は、こうした生活圏への出店強化などによって増収が続いている(株式会社良品計画ホームページ「IR情報」)。冬の時代を迎えている日本の小売のなかにあって、良品計画はいったいどのような可能性をとらえたのか。
2020年7月に新潟県上越市にオープンした「無印良品 直江津」は、この新しい展開のひとつのトリガーとなった店舗と見ることができる。