漂流をはじめたテスラはどこへ向かうのか

販売不振と株価低迷にあえぐ米EVメーカーTeslaは、イーロン・マスクCEOによりさらなる難局に突き当たった。

マスク氏は4月末、自社の急速充電器「スーパーチャージャー」部門のシニアディレクターと、彼女の下で働いていた約500人を解雇した。ブルームバーグなどが報じた。実質的に部門のほぼ全体が消滅した形だ。

2024年6月12日、テスラ株主総会を前にXで開始された南アフリカ人実業家イーロン・マスクのキャンペーンが映し出されたスクリーンの前で(ロサンゼルス)
写真=AFP/時事通信フォト
2024年6月12日、テスラ株主総会を前にXで開始された南アフリカ人実業家イーロン・マスクのキャンペーンが映し出されたスクリーンの前で(ロサンゼルス)

ロイターは、スーパーチャージャーは2012年にカリフォルニアで初めて導入され、EVの長距離移動を可能にする「ゲームチェンジャー」として評価されてきた、と振り返る。

しかし、今回の解雇劇により先行きが暗転した。充電ネットワークの拡張計画に大きな打撃を与え、電力会社やアクセスを解放していた他の自動車メーカーとの関係にも悪影響を及ぼしている。

業績不調によるコストカット策

米テック・クランチは、解雇の理由はTeslaの売上が急激な成長ペースを維持できておらず、利益が減少しているためだと指摘する。解雇後Teslaは、スーパーチャージャーの新設ペースを遅らせると発表した。今後は、既存サイト(既存区画)の稼働時間の向上および設備のアップグレードに注力するという。

だが、新設だけでなく、既存設備のアップグレードにも遅れが生じる可能性がある。Teslaは解雇後に生じた不安を打ち消すべく、スーパーチャージャーのネットワーク拡大に今年5億ドル以上を投資すると発表した。しかし、テック・クランチは、チームが解雇されたいま、その目標を達成するのは難しいと指摘する。

解雇後、Teslaはスーパーチャージャー部門の元従業員の一部を再雇用し始めたが、具体的な人数は明らかにされていない。解雇された従業員の中には、北米の充電部門を統括していたマックス・デ・ゼーヘル氏も含まれていたが、ブルームバーグによると彼は再雇用された模様だ。

やっとサイバートラックを納車にこぎ着けたのに…

Teslaは昨年末、受注から4年を経て、EVピックアップトラック「サイバートラック」をやっと納車にこぎ着けた。今回の解雇は、話題のサイバートラックにも多大な影響を与える可能性がある。

サイバートラックは800ボルトの充電能力を持つが、Teslaの既存のスーパーチャージャーの多くはこれに対応していない。そのため、充電インフラの整備が急務となっていた。

Tesla Japan「CYBERTRUCK」オフィシャルサイトより
Tesla Japan「CYBERTRUCK」オフィシャルサイトより

米EV情報メディアのエレクトレックは、Teslaの新しいV4スーパーチャージャーは800ボルトの高速充電をサポートしているが、これらはまだ限られたスーパーチャージャーサイトにしか設置されていないと指摘する。