また、V4スーパーチャージャーは10フィート(約3メートル)の長いケーブルを備える。これ以前のバージョンではケーブル長に余裕がなく、大型のサイバートラックへの対応が難しい。とくに、サイバートラックの充電ポートはホイールウェル(タイヤを装着するスペース)付近にあるため、短いケーブルでは取り回しに苦労する。
サイトの新設やアップグレードの遅れは、提携する他メーカーの大型車両にも影響を及ぼす。Teslaは、米運輸省がEV整備を推進する「NEVIプログラム」を通じ、政府補助金を獲得していた。他社製EVによるスーパーチャージャーの利用を前提としたプログラムだったが、スーパーチャージャーチームの解雇により、計画に影響が出る可能性がある。
リストラは寝耳に水だった
スーパーチャージャー部門にとって、解雇は寝耳に水だった。スーパーチャージャーの充電網は競合他社に対し、非常に優秀な性能を誇っていたためだ。
テスラのスーパーチャージャーネットワークは、世界中で5万5000台以上の充電ポートを提供する、世界最大のEV充電ネットワークの一つだ。このネットワークは他のEVメーカーにも開放されており、フォード、GM、リビアン、ボルボなどが参加している。
テック・クランチは、競合他社との比較において、スーパーチャージャーは99.95%の高い稼働率を誇ると述べている。カリフォルニア大学バークレー校の調査によると、サンフランシスコ・ベイエリアのEVドライバーの25%が公共の場にあるスーパーチャージャー以外のEV充電設備で重大な問題を経験したのに対し、Teslaのスーパーチャージャーではわずか4%だった。
また、設置と運用も極めて効率的であり、1台あたりの設置コストは競合他社の半分以下となっている。充電が他社に開放された昨年も利益を上げていたため、チームはマスク氏の采配に高い期待を持っていた。
チーム500人のほとんどを解雇した
だが、4月末にイーロン・マスク氏は突然、チーム500人のほぼ全員を解雇した。ロイターが4人の内部情報者の情報をもとに報じたところによると、解雇はマスク氏の指示に従わなかった部門統括者への私怨とも取れる内容だ。
マスク氏はスーパーチャージャー部門の将来についての会議で、部門の責任者であるレベッカ・ティヌッチ氏のプレゼンテーションに不満を示し、さらなる人員削減を要求したという。
だが、ティヌッチ氏はわずか2週間前にも、大規模なレイオフの一環として、15%から20%のスタッフを削減していた。ティヌッチ氏が、これ以上の削減は充電ビジネスの根本を揺るがすと反論したところ、マスク氏は彼女を500人の部下ごと解雇し、部門を抹消した。
影響は業界他社にも
解雇の影響は他の自動車メーカーにも波及している。スーパーチャージャーへのアクセスに関して、Tesla側の窓口と連絡が取れない状況が続いており、他社の充電インフラ計画にも影響を与える可能性がある。ブルームバーグは、Teslaの株価は解雇の影響で24%下落しており、投資家の不安も高まっていると報じている。