他社には好機だ。英エネルギー大手・BPのEV充電事業の責任者は、テスラが連絡を絶った不動産パートナー各社と協力し、事業を加速する意欲を示している。他の自動車メーカーにアクセスを解放する前から利益を上げていたスーパーチャージャーだが、今後は収益性にも影響が出る可能性がある、とテック・クランチはみる。
マスク氏はTeslaのスーパーチャージャー部門が担っていた業務を、同社のエネルギーチームに移管した。だが、ロイターは、両部門の業務が本質的に異なるとして、先行きを疑問視している。
スーパーチャージャー部門は、公共の場所に設置される充電プロジェクトを担当する関係上、電力会社や地方自治体、土地の所有者らとの交渉役を兼務していた。一方、エネルギーチームは家庭や企業向けの太陽光発電およびバッテリーストレージ製品を設計・製造しており、社外との交渉は専門外だ。
増えすぎた会社、広げた事業、マスク氏の即断即決…
今回の解雇騒動は、即断即決のイーロン・マスク氏の悪い面が出たと言える。X(旧Twitter)では、未だに定着していない名称変更を筆頭に、唐突な解雇や仕様変更の嵐を生んだ。従業員だけでなく、ユーザーや広告を出稿していたスポンサーからも見放されつつある。
数社のCEOを兼務するマスク氏だが、手を広げすぎたことで、正常な判断が行き届かなくなっているとの批判がある。テレグラフ紙は、Xの買収やSpaceX、xAIなど他の事業に多くの時間を割いているため、Teslaの経営に対するコミットメントが疑問視されていると指摘する。
もっとも、マスク氏による企業同士の相乗効果も一部には見られる。頑強なサイバートラックは昨秋、重量16トンのSpaceXのラプターエンジンを単独で輸送した。だが、こうした創発効果は限定的だ。
Tesla単独で見ても、マスク氏の企業は問題が山積している。EV販売は急激に減少しており、特に中国勢との競争が激化している。また、マスク氏は2018年に合意された巨額の報酬パッケージを受け取る予定であるが、これは多くの株主から批判されている。
Teslaの株価は2021年のピークから半減しており、年初来で34%下落した。ブルームバーグは、これはナスダック100指数とS&P500指数の中で最も大きな下落だと指摘する。
輝いていたかつてのTeslaの復権は起こりえるだろうか。手を広げすぎたマスク氏が事業を整理し、さらには拙速な判断の癖を直すことが前提となりそうだ。