音楽を賢く取り入れて、心地よい環境作りを

「環境音」の効果はそれだけではありません。

集中力を高める音のゆらぎ“1/fゆらぎ”が含まれているのです。

ちなみに1/fゆらぎは、「規則性」と「不規則性」の両方を兼ね備えた音を指します。

例えば波の音や雨の音は、たしかに規則的ではあるものの、不規則な音も混じっているので、1/fゆらぎが発生するわけです。

私は25分の作業をし、5分休憩を繰り返すことで集中力を維持する「ポモドーロ・テクニック」を行う際、YouTubeの「ポモドーロ・テクニック用」の「環境音」、特に波の音を好んで聞いています。心地よく、しかも集中できる効果を感じています。

でも、こう思われたかもしれません。「環境音だけでは、あまりに退屈だ」

だとすれば、普段、音楽を聞きながら作業をする習慣がある人に限っては、音楽を聞いてもいいでしょう。集中力を高めるわけではありませんが、リラックス効果を得られるので心地よく作業ができます。

「集中するためだけに環境音しか聞かない」、人はそんなにストイックではいられません。心地よさも大事でしょう。音楽をうまく取り入れるのも賢い選択です。

集中したい時は、22~26℃の範囲にエアコンを設定

環境省のホームページには、このような記載があります。

「環境省では、快適性を損なわない範囲で省エネルギーを目指すために、室温を夏季28℃、冬季20℃とすることを推奨しています」

もちろん、省エネの観点から考えるとそうしたいのは山々ですが、集中力を高めたいのであれば、その設定はNGと言わざるを得ません。

多くの研究で、おおむね22℃から26℃の範囲にしないと、集中力が削がれることが明らかになっています。

まず、集中したい時は、22~26℃の範囲にエアコンを設定しましょう。

その根拠となる研究を次にいくつか紹介します。

・室温を20℃から25℃に上げることで、タイピングミスが44%減少し、文字量も150%増加した。(コーネル大学アラン・ヘッジ教授らの研究)

・もっとも仕事の生産性が高い温度22℃。(ヘルシンキ工科大学、ローレンス・バークレー国立研究所の共同研究)

・室温として一般的なオフィスで推奨されるのは26℃。

約100人のオペレーターが扱った年間1万3169人分のコールデータを対象に、室内環境と生産性の関係を分析したところ、25℃から28℃に上がると6%も生産性が低下した。(早稲田大学理工学術院田辺新一教授)

・25℃の時と比較して、28℃で8時間作業をすると、最後の1時間では15%くらいパフォーマンスが落ちた。(東京疲労・睡眠クリニック院長梶本修身)

数値にはバラツキがあるのですが、集中力を維持する上では、22~26℃が最適であるとまとめられます。

研修講師としても、室温の重要性を強く感じています。

伊庭正康『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』(明日香出版社)
伊庭正康『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』(明日香出版社)

室温を省エネの観点で28℃に設定されているオフィスもあるのですが、研修開始から3時間程度たつと、受講者に疲労の色が見えてくるのです。

その際、受講者のみなさんに「少し暑い人はいますか?」と聞くことがあります。1/3程度の人が、“少し暑い”と回答されます。

その後、室温を25℃前後に調整すると、受講者の注意力が回復するのが、手に取るようにわかります。

集中したい時に限っては、室温を22~26℃の幅で設定することをオススメします。

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