「ひどいですね」というコメントでは何も変わらない

すると私のメッセージはまたたく間に拡散されました。具体的に止める方法さえ見つかれば、こんなとんでもない法案、子育て世代を中心とした市民たちが動くに決まっています。そして実際に世論が沸騰した。

子育て中の保護者たちが冗談じゃないと立ち上がり、6日の夕方からオンライン署名を呼びかけたところ、あっという間に数万人の署名が集まりました。県知事の元にも1000件を超える反対意見が寄せられたそうです。この民意を議会も県も無視するわけにはいきません。わずか4日後の10月10日、自民党県議団は改正案を取り下げることを発表しました。1、2日で空気を変えることができる。これが市民の力です。

「理不尽な条例ですが、成立やむなし」という論調で報じるだけだった大手マスコミは、やはり市民感覚からずれていると言わざるを得ません。ワイドショーで「ひどい条例ですね」などと言っているだけではどうしようもない。

具体的に止める方法があり、市民にはその力があるんだということをなぜ報じないのか。この一連のスピーディな動きによって県議会を変えたことは、市民にとっての成功体験になりましたし、私自身も大手マスコミの限界とSNSの力を改めて実感した一件となりました。

「記者クラブ」と「政治部」は解体すべき

埼玉の一件は、マスコミよりも政治家のほうがよほど世論の風に敏感であるということを示したように思います。政治家は、世論の風向きが変わった瞬間に、「ヤバい! 子育て層を敵に回してしまう」と、一気に方向転換しました。そのあたりは、マスコミのほうが世論に疎かった。けしからんけれど、もう既定路線だから仕方ないね、というような論調に終始していました。

マスコミが市民目線を取り戻し、緊張感を持って権力の監視役としての役割を果たすためにも、記者クラブのような馴れ合い組織は廃止にしたらいいと思っています。記者クラブそのものが、まさに既得権益化している。特権的な集団に所属することで、おこぼれに預かって記事にするなど、民主主義の国のマスコミの姿ではないはずです。

その意味では、私は記者クラブおよび政治部廃止論者です。政治部なんて名ばかり、実態は「政局部」ではないでしょうか。誰と誰が飯を食ったとか、手打ちしたとか、どうやって金を集めているとか、追いかけているのは政局の話ばかり。

そんなことは政治でもなんでもありません。そのような報道姿勢を続けるならば、政局部と名前を改めたらいいのです。自民党の旧派閥の力関係、与野党の駆け引き、総理の椅子に近いのは誰だのと玄人っぽい話で騒いでいるだけで、その人がどのような政策を掲げているのか、まともに取材しようとはしないのですから。