最短距離でビジネス英語は習得できない。英語を毎日2時間勉強する、それでも英語を自由自在に使いこなすレベルになるには20年かかると大前氏はいう。大前流「ロジカル・シンキング」に基づいた“勝てる”英語の真髄を説く。

TOEIC900点でも“教習所卒業程度”レベル

TOEIC700~800点といえば、英語に少々自信が出てきたレベルではないだろうか。しかし、ビジネスの場で通用するかといえば、はなはだ怪しい。実際、ビジネスの場で英語の壁に突き当たり、悩み始めるのもこのくらいのレベルなのだ。

では上級のビジネス英語はどうあるべきなのか。異文化環境でのリーダーシップとコミュニケーションの習得を目標に掲げる「実践ビジネス英語講座 上級コース」を主宰している経営コンサルタントの大前研一氏が、同コースの目玉として、受講生にビジネス英語のキモを英語で語りかけ、学習者がぶつかる壁の乗り越え方を伝授する講座のビデオ収録があると聞き、潜入してみた。

「ペーパーライセンスの皆さん……」、大前氏が開口一番、受講者に語りかける。

同コースはTOEIC700点以上の学習者が対象だが、それは教習所卒業程度であり、ビジネス英語の世界では、危なっかしい若葉マークということなのだろう。

ビジネス英語に関する受講生の悩みに答える形で、大前氏が次々に語っていく。会議でネイティブのように英語がスムーズに出てこないという悩みには、「そもそも簡単に英語がうまくなる方法などない。英語圏に生まれ育っても、効果的なビジネス英語が使えるわけではない」という。

確かに我々日本人も日本語はペラペラだが、ビジネスの場での会話は別物だ。

「ビジネスをやるためには、どういう言葉遣いが必要なのか。それなりの経験をして、苦い思いもたくさんしなければならない」と、最短距離でビジネス英語を習得したいという安易な姿勢を批判する。

「TOEIC850から900点くらいになると、教習所の外に出て街を走り回れるくらいにはなるが、自信が持てない人は多い。実はビジネス英語を自由自在に使いこなせるようになるには、ここから先の道のりが非常に長いのです。そのレベルまで英語に慣れるには年間700時間やっても20年かかる」

つまり、1日2時間の練習である。平日に時間がない人はどうすればいいのか。

「毎日できない人は週末に5時間ずつとか7時間ずつでもいい」

それなりの覚悟が必要だが、勉強内容は人それぞれだという。

「英語に慣れるということだから、映画を見てもいいし、CNNをつけっぱなしにしてもいい。要はいろいろな場面で英語に慣れていくことが必要なのです」