後で見直さないノートを事細かく取っても意味がない

滞りをなくせるかどうかは、ちょっとした心の持ち方でもあります。

そのためには「世間の常識」が本当に合理的かどうかを考えてみることです。世間の常識とは行動経済学でいうところのバイアスに過ぎず、それは仕事をスムーズに処理していくうえでの大きな滞りの原因となるのです。

滞りは時間管理だけではなく、仕事の進め方や行動スタイルにも大きな影響を及ぼします。

たとえば、メモの取り方ですが、みなさんはどのようにしていますか。

世間の常識でいえば、「人の話を聞くときや読書をするときなどに細かくノートをとるのがいい」といった話をよく聞くのではないでしょうか。

しかし、本当にノートやメモを細かくとるのがよいのでしょうか。

大学の授業などではテスト対策や実験レポートの作成などもあるでしょうから、細かくノートをとるのは重要でしょう。けれども、試験後も後生大事にノートを保管して時々見直す人はめったにいないと思います。

ましてや社会人の場合、ノートやメモをとっても、見直すことはほとんどないと思います。

そう、滞りをなくすという視点からもノートをとる意味はあまりないのです(熱心さをアピールするというパフォーマンスとしては「あり」かもしれませんが)。

実際、私は義務的に記録に残す場合を除いては、ノートはとらないことにしています。またメモは基本的にはなしで済ませますが、どうしても必要な場合は用件が終わればすぐに捨てます。

もっとも、ずっと以前からメモをとらなかったかというとそうではありません。ある時期、私も事細かくメモをとっていたことがありました。

しかし、メモをとってもそのメモを見返すことはほとんどありません。せいぜい電話番号を書き留めたり、伝言メモをとったりするくらいでしょうか。

何でもかんでもメモをするほど、本当に大切なことを忘れてしまう

資格試験の対策ノートも今は参考書などが充実しているケースがほとんどなので直接書き込んだり、デジタル資料に目を通したりすれば手書きのノートは不要です。

書き留める情報にしても、その情報の賞味期間はせいぜい1カ月程度です。

自分の記憶力を落とさないという視点からも、よほどのことがない限り、メモをとる必要性はないのです。些末さまつなことや、何でもかんでもメモして忘れないようにすればするほど、記憶のキャパシティをオーバーし、本当に大切なことを忘れてしまいます。

服やラップトップに付箋をつけて悩みを抱えるビジネスウーマン
写真=iStock.com/Khosrork
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時間管理についても、私はスケジュールを手帳に書き留めたりすることはほとんどありません。もちろん、仕事で「うっかり」が絶対に許されない予定などはカレンダーに書き込んだり、スマホで管理したりしていますが、それ以上のことはしません。

かつてはメモが絶対に必要とされていた時代もありました。しかしデジタル化が進むなか、どうしても記録が必要ならばノートはとらなくても録音や録画で片付くことも少なくありません。