スーツにリュックはアリなのか
大都市での電車通勤は、ガラガラだったのが遠い昔に思えるほど混雑している。駅構内や車中では男女ともにリュック姿が目立つ。筆者が「スーツ姿にリュックで電車通勤する人が増えた」と初めて記事に書いたのは2016年の冬で、翌年にはJ-WAVEの番組でも解説した。最近はどんな状況なのか。
紳士服大手の青山商事「ザ・スーツカンパニー」が2022年7月に10代~50代男性(1444人)に実施したアンケート調査がある。
それによれば、通勤時にメインで使用しているバッグが「リュック」と答えた人は43.9%、次いで「ブリーフケース」(32.3%)、「トートバッグ」(21.5%)の順だった。
「肌感覚では、リュック通勤はもっと多いように思う」という周囲の感想もあった。
そこで「スーツにリュックはアリか?」を改めて考えるべく「ポーター」(PORTER)で知られる吉田カバン(※)に聞いた。
(※)正式社名は株式会社吉田。名称は「吉」の「士」の部分が「土」
「全面的にNG」という会社は聞かない
まずは、スーツ×リュックについて、吉田カバンはどう感じているのだろう。
「あくまでカバン屋として話すと、今では、まったくNGという会社はほとんど聞きません。店に来られるお客さまにも、リュック(デイパック含む)が圧倒的に人気です。年齢や役職を問わなくなりました。総じて20代から40代の方は最初からリュックを探しに来られ、50代以上の方は手提げバッグも探される傾向が多い印象です」
吉田カバンの広報部・名倉楓也さんはそう話す。
「服装との関連性もあります。肩パッドが入った上下同じ色のスーツを着る方は減り、カジュアルなジャケパン(ジャケット+パンツ)スタイルの方が増えました。年配者や役員クラスでもリュックに変えると、『両手が空くので手放せない』という声を聞きます」(名倉さん)
「毎日フォーマルスーツで出勤していた当社の古参役員も、手提げバッグから最後はレザーのリュックになりました(現在は退任)。役員や管理職がリュックにすると部下も使いやすくなり、バッグ選択の自由度が高まるようです」(同)