※本稿は、今福啓之『投資信託業界歴30年の父親が娘とその夫に伝える 資産形成の本音の話』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
インデックス投資だけでは十分でない
インデックスファンドは指数への連動をめざしているのであって、投資家から預かったお金を増やすことをめざしてはいない。
そしてその指数自体も、市場の今をキャプチャ(捉える)し続けることが使命の経済指標のようなものであって、決して指数の成長をめざして作られているわけではない。これは2人にもう一度思い出してもらいたい、とても大事なポイントだな。
その大原則を理解した上で、それでもS&P500やオール・カントリー(オルカン)などの海外株式インデックスのファンドは、ベースとして持っておくべきファンドだと言っておく。ただ、あえて「ベースとして」と言ったのは、それだけでは十分でないと僕は思っているから。
どの本もYouTuberもきっと「低コストのインデックスファンドを積立で買ってほったらかしにしておきましょう」としか言っていないと思うけど、思い切って僕の持論を話そうと思う。
まずインデックスには、宿命的な課題というか盲点があると思っていて、投資する君たちの時間軸が長ければ長いほど、本気であればあるほど、それは重要だと思っているんだよね。
機関投資家の「パッシブ集中」が起きている
それは、これまで何度か触れてきた「時価総額加重方式」のこと。
S&P500もオール・カントリーも、メジャーな指数は時価総額加重方式で計算されている。何度も話したけど、時価総額とは「株価×発行済株式数」のことだから、たくさん株式を発行してきた大きな企業が、投資家に評価されて高い株価になればなるほど時価総額は大きくなる。
創立間もない企業は、創業者が持っていた株式を上場時に一般の人に放出した株数プラスアルファ程度の株式数しかないから、株価が多少高くなったとしても時価総額はそんなに大きくない。株価も低い企業であれば、もちろん時価総額は小さい。
この時価総額というものが大きければ大きいほど、指数に占める割合が高くなる計算方法が「時価総額加重方式」だ。
もうひとつの計算方法が「単純平均方式」で、日経平均株価なんかがそうだ。細かな調整方法は置いておいて単純化すると、225社の株価を足して225で割るといった感じ。
どっちも一長一短あるんだけど、数年前からは特に、時価総額加重方式の問題が大きくなっていると思ってる。それは、何度も出てきた「GAFAM集中」に加えて、機関投資家の「パッシブ集中」が重なって起こってきた数年だからだ。