前年比32%、減益幅が目を引いた住友商事
五大商社の2024年3月期決算が出揃いました。世界的な投資家であるウォーレン・バフェット氏が「上限9.9%まで買い増していく」と表明したことで注目が集まった五大商社は、好決算が相次いだ昨年から一転して減益が目立つ結果となりました。
昨年度は資源バブルと言われ、三菱商事、三井物産がそれぞれ純利益1兆円超えで稼いだのですが、今期、各社の業績を引っ張ったのはその資源価格の下落でした。各社とも金属資源部門の減益が大きかったのが減益の共通要因です。唯一、資源への依存が少ない伊藤忠だけが0.2%増とわずかに増益決算となりました。
金属資源への依存が大きい三菱商事が18%減と大幅な純利益減となったのも目立ちましたが、とりわけ目を引いたのが住友商事の減益幅でした。前年比32%減の純利益3864億円という結果で、投資家界隈からは「どうした住商?」という声も聞かれました。
住友商事の業績は本当に悪いのでしょうか? そして五大商社はバフェットが考えるように「買い」の投資先なのでしょうか? 総合商社のビジネスとは何か? という観点から考えてみたいと思います。
21世紀の総合商社は「投資事業会社」として成功している
さて日本企業の時価総額ランキングを見ると五大商社はそれぞれ上位を占めています。三菱商事が時価総額約14兆円で総合7位、三井物産が約12兆円で12位、伊藤忠が約11兆円で15位と続き、丸紅、住友商事もそれぞれ約5兆円で40位以内につけています。
総合商社株が買われている理由は21世紀の商社が投資事業会社として成功しているからです。20世紀の商社は国際的な貿易会社だったのですが、世界の情報が手軽に手に入る時代になったことで輸出入ではあまり儲からない時代となり、商社は事業投資にスタンスを移したのです。
では商社はファンドになったのかというとそうでもありません。バフェットが注目したのは日本の総合商社の興味深いビジネスモデルにあります。
欧米型のファンドビジネスと対比してみるとわかりやすいのです。欧米のファンドは株式を取得して経営陣を送り込み、戦略を見直させ、それで企業価値を上げたら今度は株を売り抜けるのが基本的なビジネスモデルです。
一方で総合商社は株式を取得するなど権益に金を出して投資をするところまでは同じですが、そこに雇われ経営陣ではなく商社マンという「人」を送り込んで企業価値を上げていきます。しかも儲けの出口は株を売り抜けるのではありません。そのビジネスを成長させて長期持続的に儲けます。その目的のためにセグメントと呼ばれるさまざまな事業領域において複数の会社に投資していきながらバリューチェーン全体を押さえていきます。