事業構造を良い方向に変える可能性を感じさせる
ただ経営評論家の立場で住商の戦略を眺めていると実はそうでもない救いが見られます。それは説明会の後半で今期以降の3年間の戦略を語っている情報の中から読み取れます。住友商事の今後3年間の中期戦略では、投資会社らしく「No.1事業群」を作っていくことを戦略のテーマに置いています。
そしてそれを実現するためにセグメントの再編をすると言っています。特に大きな点は60年続いた部門・商品本部制を廃止して、44の戦略的ビジネスユニットに組織を再編するというのです。さらに戦略上の親和性の高い9つのグループを編成してグループCEOを中心とした経営組織に移行すると言っています。
方向性としてはこの戦略は住友商事の事業構造を良い方向に変える可能性を感じさせます。他の四大商社と違い、住友商事はセグメント毎の稼ぐ力にばらつきがあり、モビリティ関連の自動車、輸送機、建機の利益への依存が高かったというのがこれまでの構造です。これが9つのセグメントに再編され、9つのセグメントがそれぞれ利益の柱となるように投資成果を出していく形に変われば、住友商事のポートフォリオは改善されるはずです。
21世紀型・日本型の投資会社としての利益成長を目指すべき
ひとつだけ懸念点を挙げさせていただくと、この9つのグループの分け方が恣意的というか、同じぐらいの大きさになるように意図的に分割されている点はマイナスです。各グループのモチベーションを優先したという意図はわかりますが、投資事業として最適な組織かどうかについては疑問を感じます。
このように5位に転落した住友商事には、巻き返しが必要ですが、投資事業会社として五大商社それぞれが置かれた状況は同じです。総合商社各社は前々期は資源ビジネスが好調で空前の利益をたたき出し、他の四大商社においては前期はその資源のマイナスを他のセグメントの利益がカバーできました。
そして4月に始まった今期は、分断など不確定要素の多いグローバル市場を相手に、それぞれのセグメントで積極的な投資をし、長期的な投資利益が構造的に増えていくように人的資本経営を展開していく。バフェット氏の期待に応えるべく目指すべきところは、21世紀型・日本型の投資会社としての利益成長なのです。