「対面でやる必要なくね?」「タイパ悪くね?」「生産性低くね?」

「オヤカクをすること自体が新社会人としての自立を阻害してしまう可能性がある。複数の内定をもらうのが当たり前の時代であるが、内定を取得したら第一志望の企業に入社するのは昔も変わらない。どうすれば自社を選んでもらえるかを考えるのが人事部の役割ではないか。オヤカクという姑息な手段で内定辞退を避けようとするのは本質とずれているのではないか」

また、早期離職に関しては、オヤカクの効果は薄いと指摘するのは住宅メーカーの人事担当者だ。

「オヤカクによって内定辞退を防止し、入社までこぎつけたとしても、もともと自分で判断できないような主体性のない人だ。入社しても仕事で決断を迫られる場面に遭遇すると、周りに何か注意されたことをきっかけにして遅かれ早かれ辞めていく。オヤカクの効果は内定辞退の防止ぐらいだろうが、会社にとってはそれこそコスパが悪い」

確かに最近の早期離職の傾向を考えると、オヤカク程度では防ぎようがないかもしれない。産労総合研究所が発表した2024年度の新入社員は「セレクト上手な新NISAタイプ」と命名し、その特徴として「デジタルに慣れ親しんでいる一方で、対面コミュニケーションの経験に乏しく、『仲間』以外の世代との距離感に戸惑う面もある。また、タイパを重視し、唯一の正解を求める傾向が年々増している」と分析している。

タイムパフォーマンス(時間対効果)に敏感な一方で、正解探しの傾向が強いというのはちょっとやっかいだ。

オフィスでPCと格闘するビジネスマン
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文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は「人の言うことはよく聞く謙虚さや素直さを持ち、指示されることに慣れている世代」と語る。

その背景として大学入学当初にコロナが蔓延し、キャンパスに入れず、講義もオンライン。サークル活動やアルバイト経験も少なく、講義に出席しても席を空けて座るなど大学の厳しい管理下で過ごすなど自由な大学生活を謳歌できなかったことを挙げる。

「指示されるのは当然と考えており、逆に指示してくれないと困るし、動けないのは当然という感覚を持っている」(平野所長)

また、平野所長は転職することはアグレッシブな行為であり、そこまでアグレッシブな人たちは多くないと語るが「ただし、嫌なこと、自分には無理と思ったら、ファーストキャリアだし、辞めてもいいやという感覚はほぼ全員が持っているのではないか」と語る。

例えばデジタルに慣れており、学生時代に在宅でのオンライン生活が長かったため「惰性的に対面で何かをやらせると、『これってわざわざ出社して対面でやる必要なくない?』とか、『タイパ悪くない?』と思ってしまう。最近の学生は『それって生産性低くない?』とか言葉だけは社会人並みの言葉を使う。仕事の進め方や働き方のスタイルにギャップを感じたら転職を考えはじめる可能性はある」(平野所長)と指摘する。

24年度入社の新人は1カ月以上経過し、今は先輩や上司によるOJT(職場内教育)の最中だ。教え方や指導法を少しでも間違うと退職の引き金になる可能性もある。

採用コストをドブに捨てる事態を会社側は少しでも減らしたいだろうが、具体的にはどうすればいいのか。専門家に新人に「言ってはいけない・やってはいけない」言動について聞いた。