2025年春入社の就活がスタートした。転職活動も活発だ。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「求人企業の“口コミサイト”は参考になる情報も掲載されているが、匿名の内部社員が個人的な不満のはけ口に利用したり、一部を誇張して批判したりすることも多い。より正確な情報を得たいなら、違うソースを当たるべきだ」という――。

求人企業の“口コミサイト”情報は玉石混交である

就活や、転職活動で求人企業の「口コミサイト」を覗く人も多いだろう。面接対策をはじめ給与や残業時間、有給休暇の取得しやすさ、職場の雰囲気など、企業の実態を知るのに参考になる。

実際に口コミサイトを見ている人は多い。エン・ジャパンの「『転職活動時のクチコミ閲覧』実態調査」(2024年2月20日)によると、転職活動中に企業の社員口コミを見ている人は50%もいる。最も多いのは20代の57%だ。

この中には就活生は含まれていないが、社会人のスタートとなる会社だけに多くの学生が見ている可能性が極めて高い。

一方で企業側も口コミを恐れている。建設業の人事担当者はこう言って肩を落とす。

「周囲との人間関係になじめない、上司との相性が悪くなり、退職する若者もいる。あるいは上司のパワハラ相談を受け、内部調査の結果、パワハラに当たらないことを本人に伝えたが、納得しなかった社員もいる。その中に口コミサイトに投稿している人がいることは容易に想像できる。学生や中途採用に影響を与えるのは非常に困るが、防ぎようがない」

懸念するのは採用活動への影響だ。前出の調査によると、社員口コミを見ている人のうち、「応募前」に見ている人は91%と当然ながら多い。続いて「応募後~一次面接」で見る人が30%、「選考中~最終面接前」(14%)、「内定承諾前」(10%)と続く(複数回答)。

「応募前」と回答した人の中には「応募する前に確認しないと、その後に確認して応募をキャンセルするのは失礼になるから」(20代男性)という声もある。

「応募後~一次面接」では「試験内容などを確認する」(20代男性)、「内定承諾前」では「複数社から内定をもらっている時は、条件の見直しや比較のために見る」(20代男性)、あるいは「本当にこの会社でいいのか心が揺らぐことがあるから」(30代女性)という声もあるなど、さまざまな理由で活用していることがわかる。

ただし社員の口コミは、必ずしも真実が書かれているとは限らない。匿名であるため、職場の不満のはけ口に利用している社員もいれば、会社の制度の不備を誇張して批判するなど、ネガティブで主観的な声も少なくない。いわば、自身の思い込みやミス、仕事上の不出来を棚上げして上司や会社をディスってやる、と感情的になった結果というケースも多い。投稿された時期が古く、現在は制度が改善されている可能性もある。口コミを鵜呑みにするのは禁物だが、社員の口コミを見て「応募を辞めた」人が67%と、7割近くもいる。

また、社員の口コミで「応募を辞めた」「選考辞退した」「内定辞退した」人にどのような口コミの内容が影響したかも聞いている。それによると「給与・賞与の不満」が48%もいるほか、「人手不足・人が辞める」(47%)、「従業員の士気の低さ・人間関係の悪さ」(47%)、「残業・休日出勤の多さ」(45%)、「上司によるハラスメントや心身への負担」(42%)が上位に挙がっている。

とくに20代は「給与・賞与の不満」が53%、「残業・休日出勤の多さ」が56%と突出して高くなっている。