社員の昇進昇格や給与の判断材料となる業績評価・人事考課。その役割を担う管理職の上司はどのように部下に対処しようとしているのか。世界で40年以上読まれ続ける『マネジャーの全仕事』から、知られざる「人の上に立つ人」の意識や価値観を紹介しよう――。(前編/全2回)

※本稿は、ローレン・B・ベルカー、ジム・マコーミック、ゲイリー・S・トプチック『マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

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人事考課の“密室面談”で上司が部下に話すこと

業績の評価といっても、ただ「いい仕事ができているね」などと伝えるだけのものから、詳細にレポートを作成して正式に面談を行うものまで、やり方には幅がある。

誰もが自分の仕事について評価を知りたいのは当然だ。年に1〜2回、振り返り面談が設定され、そこで業務状況を話し合うというように、正式な手順の規定があるのが望ましい。形式が決まっていない場合、やらなくても変わらないような意味のないものになりがちだからだ。

上司の側は「部下とはよくコミュニケーションできているので、部下は現在の立ち位置をきちんと理解できているはず」と自信を持っていても、部下の側に話を聞いてみると、コミュニケーションが足りないと感じていることがよくある。

いまだに「何も言われないのは、うまくやれている証拠」というモットーで管理職を務めているマネジャーもいるが、これではうまくいかない。特に上級管理職には、緊急で対応の必要な案件以外、話したがらない人が多い。評価など末端の兵隊のためのもので、幹部には不要だと思っているのだ。

上級役員ならいちいち訊かれなくても、自己コントロールも状況の制御もできるに決まっている、という理屈だ。これは真逆である。経営に関わる人こそ、トップが自分の仕事をどう評価しているかを確認する必要がある。

業績評価は、マネジメント上の強力なツールなのだが、うまく使えないまま無視されがちだ。はっきり言って、業績評価をするのが苦手なマネジャーは多い。それで、下手な評価や面談をした結果、部下も業績評価で嫌な思いをすることになる。業績評価をうまく使えば、リーダーとして成果が上げられる。きちんと活用しないのは、チャンスを無駄にしていることだ。

そればかりか、あなたや組織が要らぬ法的責任を負うリスクさえある。業績評価を定期的に設定して漏れなく実施するのは、自分のためなのだ。そうすれば、マネジメントもうまくいき、同じ職階のマネジャーの中で、抜きん出ることができる。