業績評価で部下を驚かせない

もし面談中や査定のあと、部下に「評価に納得できません」と言われたなら、あなたがマネジャーの仕事をできていないということだ。業績評価で部下が驚くのは論外である。

年間を通じて部下ときちんとコミュニケーションが取れており、部下に本人の現在地をきちんと伝えていたのであれば、査定が寝耳に水ということはあり得ない。

部下に査定で驚かれないように、年間を通じて何度も非公式に振り返り面談を行っているマネジャーも多い。これはコーチングの一種であり、マネジャーと部下とで定期的に業務状況の振り返りを行い、話し合うものだ。これは正式な業績評価のプロセスではないため、部下の希望があれば資料に残してもよいし、資料は無くてもかまわない。こうしたコーチングの場を活用すれば、部下に対して、目標の修正、新たな目標の追加、職責やタスクの追加、あるいは削減などの業務調整が可能になる。

企業の中には、従業員の期待値と査定に齟齬そごが生じないよう、四半期ごとの振り返り面談をマネジャーに課しているところもある。業績評価は、「人事考課」「成果評価」「勤務評定」「業績考査」などとも呼ばれる。これをしておけば、年1回の査定面談では、その期を通じてコミュニケーションしてきた内容をおさらいするだけでよい。

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人事評価シートの項目に典型的なものを以下に挙げておこう。各項目について、「優(非常によくできている)」から「不可(要件を満たしていない)」までの3段階や10段階などで採点していく。

・業務量あるいは業務レベル
・完成度
・正確性(エラー率など)
・自主性、率先した動き
・態度
・学習能力
・チームプレーヤーとしての能力、協働
・勤怠

これ以外の項目も業務によっては追加すべきだろう。項目ごとに重み付けして、最終的に本人に提示するスコアを算出する方式もある。こうした書類はすべて、人事資料として従業員ごとに保管される。評点は、たとえば次のように示される。

・80点以上〜100点:優(非常によくできている)
・60点以上〜80点未満:良(よくできている)
・50点以上〜60点未満:可
・40点以上〜50点未満:要改善
・40点未満:不可(要件を満たしていない)

数値の幅は各社の制度によって異なる。この例では50点以上〜60点未満は「可」だが、企業によっては「中位」などと呼ぶ場合もある。「可」は優しい言葉だ。「中位」や「並み」と言われて嬉しい人はあまりいない。「可」や「要改善」のほうが「並み」「並み以下」より使いやすいだろう。世の中には「並み」程度の凡庸な人間も多いはずだが、査定が「可」の従業員が、自分を凡庸だと考えていることは少ない。

業績評価について、別の点を指摘しておこう。マネジャーの中には頭の中で評価を決めてしまってから、その数字を作るために各項目の数値をいじる人がいる。これは「制度の悪用」にあたる。たいていは、上司が部下に「要改善」をつけたくなくて、これをやるのだが、厳しい判断を先送りにしていると、今後ますます厄介なことになる。