部下が「退職代行サービス」で退職を申し出てきたら、どうするべきか。人事コンサルタントの新田龍さんは「直接、退職を申し出ても退職できないと思ったのだろう。会社が強引に引き留める『慰留ハラスメント』には注意が必要だ」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、新田龍『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を再編集したものです。

退職届のイメージ
写真=iStock.com/years
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現代人を悩ます職場の「●●ハラ」

「パワハラ」「セクハラ」にとどまらず、世の中には「●●ハラスメント」が数多く存在します。

近年では、SNSに職場の人間関係を持ち込む「ソーハラ(ソーシャルメディアハラスメント)」や、ITやシステムに詳しい人が、それらを苦手とする人に嫌がらせをする「テクハラ(テクノロジーハラスメント)」など、現代ならではのハラスメントも生まれています。

また、以前から職場に存在した嫌がらせ行為が「ハラスメントの一種」と定義されたことで、改めて注目を浴びるケースも散見されます。

たとえば、就職活動時に複数企業から内定を得ている人に対し、自社が内定を出すことと引き換えに他社内定の辞退を迫る行為は「オワハラ(就活終われハラスメント)」と呼ばれるし、妊娠・出産した人に対する嫌がらせは「マタハラ(マタニティハラスメント)」、育休取得希望の男性社員に文句を言ったり、取得を邪魔したりするような行為は「パタハラ(パタニティハラスメント)」として忌避されています。

「退職するなら損害賠償」は慰留ハラスメント

そのようなハラスメントのひとつに「慰留ハラスメント」があります。

本来あってはならないことですが、日本の職場では「慰留」は昔からよく見られる光景で、退職の意思を示した従業員に対して、会社側が必要以上の引き留めをおこない、退職希望者を困惑させることを意味します。

「ウチでやり切れないようでは、どこに行っても通用しないぞ!」といった説教で終わるくらいならまだマシなほうで、時には「この業界で仕事できないようにしてやる!」と恫喝されたり、「退職など許さない!」と退職願を受理しなかったり、「代わりの人を採用するためにかかる費用を払え!」「損害賠償請求するぞ!」など、脅迫めいた言動で無理矢理退職を断念させようとするケースも実在し、私のもとにもよく相談が寄せられています。

実際、日々転職サポートをおこなっている人材紹介会社のアドバイザーを対象としたアンケートにおいて、「退職時・退職後にトラブルになる理由」として最も多かったのは「企業から強引な引き留め」(76%)でした。