「社員が離れてしまう企業」の言い分

ハラスメントに対する捉え方が厳しくなる昨今、退職希望者にネガティブな印象を与え、組織の評判まで落としかねない強引な引き留めを、なぜ企業は実行してしまうのでしょうか。

各社それぞれ事情は異なるものの、おおむね次のようなものが多いです。

「常に人員不足の状態で、退職者が出ることで他従業員に負担のシワ寄せが出ることを避けたい」
「新たに人を採用することが困難」
「補充人員採用には時間もお金も手間もかかる」
「退職者を出してしまった上長の社内評価が低下する」

どうでしょうか。よくよく見てみると、すべて会社の一方的な都合に他なりません。

逆に言えば、そのような自己中心的なメンタリティが蔓延している組織だからこそ、従業員が離れているともいえるのです。

会社との間に入ってくれる「退職代行サービス」

慰留ハラスメントを避けたい人や、職場の人間関係が悪いためにそもそも退職を言い出しづらい人、出勤自体が苦痛で今すぐ辞めたい人などを中心に利用が広がっているのが「退職代行」サービスです。

文字通り、依頼者に代わって退職手続を代行するサービスであり、依頼者は会社側と一切コミュニケーションを取る必要がなく、精神的プレッシャーやハラスメントと無縁で退職できることを売りにしています。

「自分で選んで入った会社なのに、自分で辞めると言い出せないなんて根性がない‼」
「『逃げの転職』を助長するのではないか⁉ 仕事を引き継ぐ人の立場も考えろ‼」

などと、このサービスの存在自体と利用者のマインドを疑問視する声は以前から存在しますが、一方で退職代行へのニーズは根強いものがあり、利用者数も拡大基調にあります。

民間調査機関の調査によると、20〜30代における退職代行サービスの認知率は63.9%におよび、「退職代行の利用を検討している」と回答した割合が44.7%。そして「辞めるときには退職代行を利用する」と確定的に回答した人は約2割も存在していることが明らかになりました。