「使者」以上に振る舞う悪質業者に要注意
しかし、民間業者の中には「使者」としての役割を超え、本来は違法な条件交渉までやってしまう悪質業者が存在します。彼らのような法的に代理権限がない者が交渉した場合、たとえそれが善意によるものであっても、交渉内容や退職そのものが無効になるリスクがあるのです。
会社側が良かれと思って提示した有休消化や退職条件交渉を取り持つこともできないため、結果的に改めて弁護士に依頼しなければならなくなったケースがあったりするなど、トラブルに至る事例も報告されています。
なお「労働組合」が母体の代行業者はその中間にあたります。労働組合は法的に「団体交渉権」を持つため、民間業者では不可能な企業側との直接交渉、具体的には、退職日の調整や有休消化、未払金の支払要求といった基本的な要求は対応可能です。もし会社側が労働組合の交渉要求を拒否した場合、逆にそちらのほうが違法(不当労働行為)となってしまうため、交渉においては強い立場にあるといえるでしょう。
会社側が目指すべきは「円満退社」
もしあなたが退職代行サービスを使われる側となった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
まず、従業員自身からの申入れであっても、退職代行サービス経由であっても、企業は基本的に従業員の退職を止めることはできません。業務引継ぎや有休消化などの交渉はできる余地がありますが、「退職する」という結論自体は覆せないものとお考え頂いたほうがよいでしょう。
したがって、「円満退職」を目標にして行動することが原則となります。
その上で、まずは当該従業員が本当に退職代行サービスを依頼したのかどうかを確認するため、委任状等の提示を求めてください。
そのような書類がない場合は、「従業員本人の意思であることの裏づけが取れない限りは、退職手続を進めることはできない」と伝える必要があります。