「こんなにがんばって成果を上げたのに評価が低い」と嘆く人の実力は

いずれの口コミも真実であれば、誰もが応募を辞めたり、内定を辞退したくなったりする気持ちもわかる。しかしこうした口コミは事実なのかを慎重に吟味する必要がある。

たとえば「給与・賞与の不満」に関しては、そもそもどの企業であれ、自分が受け取る給与に満足している人は少ないだろう。加えて給与の不満は、だいたい人事評価に対する不満が多い。

一般的に自分の実力や実績を過信する人が多く、上司がつけた評価に満足する人は少ない。S、A、B、C、Dの評価ランクが昇給額に反映されるが、どの企業でも評価ランクごとに人数の割合が決まっており、昇給額の高いSランクは10%にも満たない。

「自分はこんなにがんばって成果を上げたのに評価が低い」と思うのは、その人以上に成果を上げた人がいるか、あるいは同僚の多くがその人と同じぐらいの成果を上げているからだ。

仮にS評価をもらった社員が口コミに投稿することはまずないだろうし、「給与・賞与の不満」は評価に対する主観的な鬱憤うっぷん晴らしにすぎない場合もあり得る。

「従業員の士気の低さ・人間関係の悪さ」や「上司によるハラスメントや心身への負担」が会社全体の特徴であるとすれば、こんな会社は生産性も落ちるし、そもそも業績が良いはずはなく、財務諸表を見ればわかる。おそらく口コミは特定の部署や上司に限定された話だろう。

また、「従業員の士気の低さ・人間関係の悪さ」は、口コミした本人がそう感じているだけかもしれないし、職場では浮いている人かもしれない。

とくに注意を要するのが「上司によるハラスメントや心身への負担」の口コミだ。もちろんどんな大企業にもパワハラ上司はいるし、内部通報窓口への「パワハラ相談」が一件もないという企業にはお目にかかったことがない。

さらに言えば、パワハラかどうかの判断基準はセクハラと違い、主観的判断ではなく「周囲の誰もがパワハラと感じた」など、“普通の人”の感覚が裁判では重視される傾向にある。つまり、口コミの社員が上司によるパワハラを受けたと言っても、周囲からは指導の範囲内と受け取られる場合も少なくなく、本人の主観的判断に基づいた投稿の可能性もあるのだ。

通勤する人々のシルエット
写真=iStock.com/Free art director
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