「職場がゆるすぎて辞めたい」とこぼす若手社員が増えている。金沢大学の金間大介教授は「会社側は新卒採用に高いコストをかけており、昔のように厳しく接することができない。そのため、『成長の機会が奪われている』と感じる若手社員が出てきている」という――。(第2回)

※本稿は、金間大介『静かに退職する若者たち』(PHP)の一部を再編集したものです。

公園のベンチで悩む若いビジネスマン
写真=iStock.com/itakayuki
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「職場が天国過ぎて辞めたい」と語る若者

近年、(退職代行サービスの他に)今まで会社側があまり経験してこなかったパターンの若者の退職が増えているという。その点、実は僕も同じで、過去にはほとんどなかった理由で、「先生、会社を辞めたいと思っているんですけど」という教え子がいた。聞くと、「職場が天国すぎる」とのことだ。

「何それ、めっちゃいいじゃん! お前そんなこと言ってると、もったいないお化け出てくるぞ」と、言いたい気持ちをぐっとこらえて(こらえきれずに、ちょっと言ってしまったけど。しかも死語だけど)、具体的に聞いてみると、次の通りだった。

今の職場では、基本的に誰にでもできると思える仕事しか振ってもらえず、それが終わって提出しても特にフィードバックは返ってこない。やることがなくなって待機となる時間も多く、かといって、いつでも対応できるようにオンラインツールは切らずにPCの前にいること、というルールがあるから守っている。

画面オフにしてスマホを見ていても何かを言われることはなくて、同期に聞いたら、もう一台のパソコンでゲームしていても平気だったよ、って言っていた。リアル出社する日は、原則、上司と相談して決めることになってるけど、それもゆるめで、今は最低週1日は出社しよう、と言われているので従ってる。何たる好待遇。まさにホワイトだ。

実はこれ、2021年にあった実話なのだが(2020年卒生)、その後いろいろなところで似た話を耳にするようになった。読者の皆さんはもうお気づきだろう。いわゆる「ゆるブラック」を理由とした退職だ。