続けたくないからといって、やめたいわけでもない

話がそれた。職場のゆるさと退職意向の関係を直接把握できるデータは存在しないが、ヒントならある(図表3)。

現在働いている会社・組織の継続意向と「ゆるさ」の関係
現在働いている会社・組織の継続意向と「ゆるさ」の関係(出所=金間大介『静かに退職する若者たち』)

これは「今勤めている会社でどのくらい働き続けたいか」という問いと、図表2の回答結果をクロスしている。まず注目したいのは、「すぐにでも退職したい」割合で、全体を通して約20%の若手がそう考えていることになる。この中では、今の職場を「ゆるいと感じない」人たちが最多層になる(29.7%)。

このこと自体は想像に難くない。労働環境や条件がよくない会社で働いている新入社員なら、辞めたいと思うのは当然のことだ。ポイントは、「2・3年は働き続けたい」と考えている人たちだ。こちらは職場を「ゆるいと感じる」層が最も多くなっている(41.2%)。このことは、リクルートワークス研究所の報告でも注目していて、以下のように解説している。

職場が「ゆるい」ならストレスもなく、自分がやりたいようにできて、心身ともに健康で安泰なのではないかと思ってしまうが、実際はそうではないのだ。就労継続意識が低いことは裏返せば、離職意向が高いことである。つまり、ゆるい職場は若手の離職意向を高めている可能性がある。

ここで1つツッコミを。「就労継続意識が低いことは裏を返せば、離職意向が高い」という解釈は疑問だ。これは多くの日本人にも当てはまることだが、「続けたくないからといってやめたいというわけではない」という矛盾を抱えて生きているのが今の若者たちだ。

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